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フォントがプロテクトによって足枷をはめられたように、DTPも安全性・安定性を優先させて、足枷がはめられました。
DTPはオープンなシステムであり、DTP環境は本来は絶えず進化するべきものでした。マシンの処理速度がアップすると、それだけで生産性があがるはずです。また、OSもバージョンがアップするために、使い勝手は向上するはずでした。同じように、アプリケーションのバージョンアップも、DTPの可能性を押し広げ、より便利な機能を提供します。
しかし、実際にはそうはなりませんでした。DTPでも、安全性・安定性が最優先されたのです。トラブルなく確実に出力する方法が、DTPの「デファクト・スタンダード」になりました。DTPの最大公約数ともいえる方法がスタンダードになったのです。
そのため、DTP環境はDTPユーザーの増加率がもっとも多くなったとき、つまりシェアの拡大のスピードが最大のとき、DTP環境の進化は止まったのです。最大のユーザーを獲得したアプリケーションのバージョン、つまり、Illustrator
5.5J、QuarkXPress 3.3J、Photoshop 4.0Jのバージョンが使われていたときのDTP環境が、DTPの「デファクト・スタンダード」環境になったのです。
DTPで安全性・安定性を追求すると、
アプリケーションはバージョンアップしない
OSのバージョンも上げない
マシンも新しいものに買い換えない
ことが、いままでのDTPのスキルを活用してトラブルなく出力できる方法だったのです。
これはフォントにおいても同じことがいえました。フォント環境も安全性・安定性を突き詰めると、スタンダードフォント以外は使えないようになっていきました。
特に、QuarkXPress 3.3Jを使う限りにおいては、出力はプリンタ常駐フォントを使うしかありません。イメージセッタにインストールしてあるプリンタフォントは、大半がモリサワフォントでしたから、DTPではモリサワフォントしか使えないということが「常識」となったのです。
オープンなはずのDTPは、「安全性・安定性」という足枷をはめられて、より使いやすく進化することが難しくなりました。DTP環境がより便利な環境に移行しないことで、DTPのフォント環境もまた進化することはなかったのです。 |
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