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今、なぜLETSなのか?


■ なぜフォントにはプロテクトがあるのか

 フォントのデメリットであるプロテクトについてもう少し考えてみましょう。フォントには、なぜプロテクトがあるのでしょうか。
 プロテクトは本来不法コピーを防止するためにあります。フォントが単なるデータである以上、コピーを防止する仕組みがなければ、誰でもが簡単にコピーし、フォントを買わなくなるからです。フォントが買われなくなれば、フォントビジネスはなくなり、フォントベンダーもまた消滅するしかありません。もちろん、それはユーザーにとっても歓迎すべきことではありません。
 またアウトライン化のプロテクトも、アウトラインデータがあれば、フォントを作ることが可能だからです。フォントを作成するツールはいくつも販売されていますから、それらを使うことでもアウトラインデータからフォントを作成することはできないことではありません。
 不法コピーや海賊版の出現を防ぐためにフォントのプロテクトがあるわけですが、そのために、ユーザーにとってはフォントはたいへん扱いにくいものになりました。
 まずアウトライン化できないことで、プリンタフォントがなければ出力できないという制限が発生しました。もちろん、アウトライン化して利用するのであれば、TrueTypeフォントを使うという選択もありますが、アウトライン化してしまったものは元には戻せませんので、効率を考えると、すべてのフォントをアウトライン化して使うというのは面倒であることも確かです。
 インストールプロテクトの問題点は、ハードディスクがクラッシュするなどしてOS環境を再構築するときに、すぐさま元のフォント環境に戻すことができないということです。フォントのインストールはフロッピーディスクのインストーラで制限されているのが普通なので、一度インストールするとそのインストーラは二度と使えません。その場合は、フォントベンダーにインストーラの再発行を依頼するしかないのです。
 インストーラが手元に届くまでには何日もかかるので、その間はDTPワークができないことになります。ハードディスクが精密機器である以上、使い続けていく内にクラッシュして使えなくなることは簡単に想像できる事態です。それに対応できないインストール方式というのは、やはり改善の余地がまたまだあるといわざるを得ません。
 また、マシンを更新したくても、いままで使っていたプロテクトフォントがそのまま移行できるとは限りません。「使用権」を買っているのに、移行できないフォントであれば、ユーザーにとってメリットが小さくなるのは当然でしょう。
 フォントを守るためにプロテクトをかけたことになって、確かにフォントの不法コピーはできなくなりました。しかし、あまりの不便さに、プロテクトを外すことを助長した面もあったのです。人間が加えたプロテクトですから、別の誰かによってそのプロテクトは外されます。そして、プロテクトを外されたフォントが普及することになったのです。
 このため、新しいPostScript CIDやOpenTypeといったフォントフォーマットが現れても、それらのフォントはマーケットには受け入れられませんでした。プロテクトは、フォントの権利を守りはしましたが、同時に新しいフォントフォーマットも無視しました。プロテクトは諸刃の剣だったのです。
 そして、DTPの普及とともに、フォントのプロテクトは、フォントの販売を阻害し、フォントビジネスにとっても足枷となったのです。


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