IllustratorにEPS画像を配置し、PDF保存すると、Illustrator内に配置された画像に水平線が入ります。Adobeのサポートデータベースに掲載されているよく知られている不具合です。画像が分割されて、そのすき間が白く見えてしまう現象です。
この現象が発生するは、Illustrator CSとCS2です。いまのところ10以前のバージョンと、それ以後のCS3では発生しないようです。
透明効果を使っていても、データの一部が画像化されたりすると、画像が分割されます。保存したPDFをAcrobatで確認すると、分割された画像のすき間に薄い線が入ります。
ただし、こういう線はAcrobatの表示倍率を大きくしても、線が太くなることはなく、実際印刷してもモニタ上の白い線が印刷物に反映されることはありません。はっきりしたことはわかりませんが、おそらく網点に置き換えるときに誤差として吸収されるのでしょう。
Illustrator CS/CS2で発生する水平線は、EPSの解像度が「72 ppi」以上の画像の時に発生しますが、はっきりと白い線が現れます。PDFにしてAcrobatで拡大すると、拡大率が高くなると、水平線も太くなります。
拡大率2400%
拡大率6400%
※拡大率を大きくすると、白い水平線も太くなります。
Adobeのサポートデータベースのページでは、原因は書かれていません。対応策として
EPS画像を埋め込んでからPDF保存する
ということしか紹介されていません。しかし、埋め込んだ画像は分割されずにPDFに書き出されるとしたら、原因はIllustratorがEPS画像を埋め込み処理する際に、分割してしまうということが考えられます。
Illustrator 10までとCS/CS2では、EPS画像の埋め込み方法が変わったのでしょうか。EPS画像を埋め込むプログラムが変更されたと考える方が自然でしょう。
CS以降はEPS画像に透明を適用しても、PDF保存できるようになりました。しかし、PDF内の透明は、「フォーム XObject」という形式で、オブジェクトに対してダイレクトに透明を適用せず、モニタ表示や印刷時に透明を適用するようになっています。つまり、Illustrator CS以降は、EPS保存時に透明の処理を行わず、EPS画像の埋め込みだけを行うようになっています。
ですから、EPS保存のプログラムを変更しなくてもEPS画像に適用された透明を反映できるはずです。しかし、何らかの理由でEPSを埋め込むときに、画像を分割して埋め込むようにしたと考えられます。透明の処理では画像を分割しても、印刷では問題なく使えるので、EPSでも分割して埋め込むことにしたのかも知れません。
また、Illustrator CS2(InDesign CS2でも)では、Photoshop形式の画像を貼り込んでPDF保存すると、同じように水平線が入ります。ただし、こちらの場合は、300 ppi以上で、モニタに表示される水平線は、印刷時に反映されないとされています。透明分割時の白い線と同じようなものでしょう。こちらの方も画像を事前に埋め込むことで対処できるとなっています。
問題はIllustratorは、いままでEPS画像を貼り込むことが基本でした。したがって、EPSを貼り込まれたIllustratorのドキュメントは少なくありません。PDFで入稿しようとすると、EPS画像を事前に埋め込んで貰うか、EPS以外のフォーマットで貼り込んで貰うしかありません。
これらの画像が分割されたPDFを、Acrobatで調べる方法はあるのでしょうか。Illustratorでは、PDF保存した後、もう一度、Illustratorで開き画像を選択すると、調べることができますが、その場合は[Illustratorの編集機能を保持]をオフにして保存したPDFで調べるしかありません。
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