こんにちは、「印刷用PDF、PDF/X出力研究会」の上高地仁です。Acrobat 4.0がリリースされて日本語フォントが埋め込み可能になって以来、PDFの出力をテーマに検証を重ねてきました。印刷用出力でPDFはもっとも早く普及すると思わせましたが、安全性を優先するためか古いファイル形式が使われ続け、PDFでの出力が主流になったのはごく最近です。
しかしPDFも完璧ではありません。PDF出力で予想しない結果で出力されてトラブルになったことはありませんか。PDFであっても、データ作成時に印刷用にとして不向きな指定や設定があれば、印刷時にトラブルを招くことになります。トラブルを招く要因を調べないままでPDFを出力してもいいのでしょうか。
もし、あなたがAcrobat 8 Pro以降を持っていれば、Acrobatのプリフライト機能で印刷時にトラブルを招くさまざまな問題を調べることが可能です。プリフライトプロファイルを選択して、プチッと実行ボタンを押すだけです。印刷時に問題のあるデータを簡単にリストできます。
Acrobatのプリフライト機能はそれほど信頼できるでしょうか。高度な機能を持っているでしょうか。たとえば、PDF編集ソフトとしてはPitStopが知られています。PDFワークフローを組み込んだRIPには、たいていPitStopが組み込まれています。つまり、数千万円の高価なPDFワークフローのPDF編集機能はPitStopが担っているのです。
しかし、Acrobatも負けてはいません。AcrobatはPitStopと同等かそれ以上の機能を持っています。Acrobatのプリフライト機能は、Adobeが独自に開発しているわけではありません。ドイツにある
Callas software社という会社からのライセンス
を受けてAcrobatに搭載されています。Callas software社をご存じですか。Callas software社は、「PDF/X」規格の制定に関わったことで有名です。
PDF/Xの最初の規格は「PDF/X-1」です。しかし「PDF/X-1」の仕様は実用性の点で不備が少なからずありました。そのためヨーロッパで実用的な規格として作り直されました。それが「PDF/X-3」です。
「PDF/X-3」の仕様を継承してアメリカ向けに規格化されたのが、PDF/Xで標準となっている「PDF/X-1a」です。その「PDF/X-3」の制定に深く関与したのが、Callas software社の社員でした。印刷用PDFについては信頼性の高いCallas software社が、Acrobatのプリフライト機能を提供しているのです。ですから、Acrobatのプリフライト機能は必要十分な機能を持っているのです。
Acrobatメニューにある[Acrobatプラグインについて]を開くと、Acrobatにインストールされているプラグインを確認できます。「Preflight」を開くと[版権]が「Callas software」にあることがわかります。
PitStopを使うためには、PitStopをそのまま使うか、PitStopを含んだワークフローの導入が必要です。しかし、Acrobat 8 Proのプリフライト機能を使うにはほとんどコストはかかりません。Creative Suite3を持っていればいいだけです。Acrobat 8 Pro以降を持っていれば、PDFが印刷用として適切かどうかは、簡単に調べることができます。
問題はどのようなプリフライトを行えばいいのかということでしょう。プリフライトで調べることがわからなければ、Acrobatの高度なプリフライト機能も宝の持ち腐れになるからです。
そこで私、上高地仁は、あなたにIllustrator用のCMYKプリフライトプロファイルをご提供することにしました。Illustratorで作成したドキュメントをPDFにしたときトラブルになりやすい、
小さなサイズのテキスト
埋め込まれていないフォント
RGBからCMYKに変換されたオブジェクト
ヘアライン
オーバープリントされた白オブジェクト
CSとCS2のEPS画像の分割水平線
などを調べるプリフライトプロファイルを作成しました。
それが「◎AC8サクサクIllustrator印刷用プリフライト」です。Acrobat 8 Pro以降で読み込んで実行するだけで、印刷したときにトラブルを招きかねないデータを調べてリストすることができます。
Acrobat 8 Proのプリフライトには印刷用のプロファイルも用意されています。しかし、CMYKに変換されたRGBブラックオブジェクトや、Illustrator CSやCS2のEPS画像の分割水平線を調べるプリフライトは用意されていません。これらはPDF/Xに違反している訳ではありませんので、PDF/Xでも対応できないものです。これほど実用的なプリフライトプロファイルは他にはありません。
それがなんとタダ
なのです。
デフォルトのパネルで調べられない部分は、カスタムチェックを利用して調べています。文書パネルやページパネルなどで15、カスタムチェックパネルでは17のチェック項目を設定しています。
「タダほど高いものはない」そういいますね。そのとおりです。このプロファイルをフリーダウンロードして公開する理由は、もしAcrobat 8 Proのプリフライト機能が役に立つのであれば『ピンチを救う Acrobat 8 Proサクサク出力のコツ』も使って欲しいという気持ちはあります。それは否定しません。
だけど、『ピンチを救う Acrobat 8 Proサクサク出力のコツ』を買って欲しいからだけで公開するわけではありませんよ。Acrobat 8 ProやAcrobat 9 Proを持っているのであれば、その機能を利用してPDFでの印刷のトラブルを少しでも減らして欲しいからなのです。
入稿する前、あるいは出力する前に、このプリフライトプロファイルをカチッと実行するだけです。もしそこで印刷トラブルになるようなものが見つかれば、いやな思いをすることはありません。印刷トラブルがあったとき、制作者側の問題なのか、印刷会社側の問題なのか揉めることはよくあります。トラブルが少なくなれば、お互いに笑顔で入稿できるではありませんか。
もし、あなたがこのプロファイルを作成するとすれば、どのくらいの時間がかかるでしょうか。想像してみて下さい。プロファイルを作成するには、PDFの仕様を学び実際に作成したプロファイルを試してみなければなりません。多くの時間がかかるでしょう。この「◎AC8サクサクIllustrator印刷用プリフライト」を使えば、プロファイル作成に関わる時間とコストを節約することができます。
Illustratorで作成したPDF、入稿したPDFをAcrobat 8 Proを使って「◎AC8サクサクIllustrator印刷用プリフライト」で今すぐ割り当てて実行して下さい。トラブルを招く要因をリストして確認することができます。問題がなければそのまま出力できますし、大きな問題があれば再入稿することで、トラブルを未然に防ぐことができます。
トラブルを含むPDFを「◎AC8サクサクIllustrator印刷用プリフライト」でプリフライトしたもの。Acrobat 8 Proでは修正できないものや再入稿が必要と思われるものは「エラー」で、Acrobat 8 Proの機能で印刷用に変換可能なものは「警告」で、データを確認してそのまま出力できそうな場合を「情報」でリストするようになっています。
プリフライトプロファイルだけでなく、A4サイズで36ページのプロファイルのマニュアルも用意しました。A4サイズですから、どのようなプリンタからでもプリントアウトできます。含まれているプロファイルのチェック内容を一覧し、対応策まで記載してあります。対応策に従ってAcrobat 8 Proを使いこなせば、問題のあるPDFも再入稿せずに、Acrobatで変換して出力することも可能です。是非、ご活用下さい。
◆あなたがこのプリフライトでチェックできることです。 |