ヘアラインというのは、「印刷可能な最も細い線のこと」を言うそうです。この場合の印刷可能な線とは、プリンタで印刷したとき、最小デバイスピクセルで出力される線のことでしょう。日本語で言うと「極細線」ということですね。もっとも印刷業界では、データ上は線として表示されても、オフセット印刷すると再現できない線を、ヘアラインということがあります。
一番やっかいなのは、「1デバイスピクセル」と呼ばれる線です。Illustratorで作成した塗り設定のみの線がそれです。この線は出力機の解像度に合わせて、最小ドットで線を作成します。つまり、600 dpiのプリンタでは、「0.042 mm」で十分視認できるのですが、2400 dpiでは「0.0106 mm」となり、印刷できても人間の目ではほとんどわかりません。真ん中の1200 dpiだと、アンチエイリアスのかかったようにぼけた幽霊のような線で印刷されます。
Acrobatでは、7.0の印刷工程ツールに[ヘアラインの修正]という機能がつきました。これで、細い線を太い線に置き換えることが可能になりました。通常、墨ベタの線は、0.1 mmの表罫程度に置き換えれば十分です。Illustratorの塗り設定のみの「1デバイスピクセル」の線も変換できます。
ちなみに、InDesignでは同じように塗り設定のみの設定は、PDF保存してもデータに一切反映されません。IllustratorはCS3になっても、同じように1デバイスピクセルになるので、IllustratorとInDesignではベジェの記述方法が全く異なっているのかもしれませんね。
印刷工程ツールの[ヘアラインの修正]には、アキレス腱があります。実はヘアラインを修正するには、機能としては十分ではないのです。レイアウトデータの中にあるヘアラインは、墨ベタの線だけとは限らないのです。細い細いかけ合わせの線も指定されることがあるのです。
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*[ヘアラインの修正]では墨ベタもかけ合わせも同じように処理されます。墨ベタとかけ合わせを別々に置き換えることはできません。
製版の時代でも、経験の浅いデザイナーが、0.1 mmの表罫に「C30Y50」などかけ合わせを指定することがありましたね。さすがに0.1 mmでは網点を貼り込むことはできませんので、製版の現場から突っ返されますが、DTPでは指定することは簡単です。プリンタでそれなりに見えることもあるでしょう。
Acrobat 8 Proの[ヘアラインの修正]では、こうしたかけ合わせや網点指定のヘアラインを個別に指定することはできません。[ヘアラインの修正]では指定した線幅以下のすべての線を置き換えることしかできません。線の種類や属性に合わせて、使い分けて置き換えるということができないのです。
どうしても、かけ合わせの線を別に指定したい場合は、Acrobat 8 Proの印刷工程ツールはあきらめて下さい。それができるのはPitStopのアクション機能です。
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