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「この第3章なんですが、「出力」というテーマからいうと、いらないと思うんです。」と寺田さんはいった。
ううっと声を詰まらせる私に畳み掛けるように続けた。
「この第3章の内容は、初心者にとっては難しすぎると思うんです。ここの内容は出力するということとは直接関係のないテーマでしょう。なくてもかまわないと思うんです。この本の購買層は、やっぱりデザイナーや編集者、オペレータといったの人たちですから、ここまでは必要ないんじゃないですか」
原宿にある翔泳社の会議室で、私は寺田さんと向かい合っていた。もう夕方の6時を過ぎ、2月の日没は早かった。翔泳社にたどりついたときはまだ薄暗かった外の景色も、そのとき高層階から見える窓の外はもう夜の帳に覆われていた。
その日はJAGAT主催のイベント、PAGE97を見に行った日だった。PAGE97はどうしようかと考えていた。シーボルトも行ってしまったし、Mac
World EXPOも毎年欠かさず行っているので、これは是非いきたい。しかしそのうえPAGEまでいくとなると、多少気がひけないというと嘘になる。行きたいといえば、行くなとは会社は言わないだろうと思っていても、2〜3ヵ月で展示内容がそうそう変わるものでもなく、直前まで躊躇していた。
しかしいまはなき、Linotype-Hell(ハイデルベルクが株式の75%を取得したので、ハイデルベルグ・プリプレスという社名に変更になった)の方からのお誘いもあり、それならば、行かずばなるまいと思い、新幹線に乗った。もちろん日帰りであった。
Linotype-Hellのブースに行って、いままでメールでしかやり取りしていなかったその方と2時間ほど話をした。カラーマッチングの話や、新しいドラムスキャナの説明などをきき、世間話をしてオフラインのひとときを過ごした。
その後ブースを回った。PAGE97に出展している株式会社ヨシタニさんのブースに行った。実はPAGE97でGordian Knotを販売してもらおうと思っていたのだか、JAGATへの申込が遅かったので、JAGATの書籍販売のブースでは扱ってもらうことができなかったのである。株式会社ヨシタニさんがPAGE97に出展するときき、ブースでGordian
Knotを販売して欲しいとお願いしたら、快諾いただいたので、挨拶がてらに様子を見にいったのである。
株式会社ヨシタニさんは、製版材料を製版会社に販売しているのだが、このようなご時世のなか、今までの製版のフィルム材料の販売だけでは先行きは見えているということで、イメージセッタなどの出力機なども含めて、扱い商品を多角化するため、さまざまなデジタルの商品を扱って次の進路を模索していた。
ブースにいくと、おなじみの顔見知りが何人かいた。彼らは社員でもないのに、あたかも社員のごとく振る舞って、展示された商品の説明をしたりするのである。
取りあえずGordian Knotの販売数は、と聞いたら全く売れていないという。受付のカウンターに置いてもらっているのだが。さっぱり買う人はいないらしい。
実は内心PAGEなどで売れば、そこそこ売れるのではないかと思ったりしていたのだが、全然注目されないようであった。人は沢山来るのだが、財布の紐は堅いようだった。まあ、仕方がない。こういうのはやってみなければ、分からないもんな、と納得するしかない。駄目なら駄目でこういう展示会で売るというルートはあきらめねばなるまい。
その後はJAGATのプリンターズサークルの打ち合わせがあった。編集の方と会って、6月号から印刷営業をテーマにして1年間連載して欲しい、ということ依頼を受けた。最初に電話で依頼をいただいたのだが、PAGEに行きます、といったら、そこで一度お会いしましょうということになったのである。プリンターズサークルで連載されている「デジタルな営業ライフ」というコーナーが5月号で終了するので、その後、印刷営業の経験を、というより実体験に基づき、その実体まで踏み込んで印刷営業マン向けの内容で書いて欲しいという要望だった。この依頼がきたのは、Gordian
Knotに「印刷営業マンよ、デジタルで武装せよ!」という書いた原稿が、編集者の方の目に留まったためであった。やっぱり印刷物にするというのは、効果があるなと思わずにはいられない。きっとWebだけであったなら、目に留まることはなかっただろうな、強く感じた次第。
「印刷営業マンよ、デジタルで武装せよ!」というのは、思いの外、読んでいる人が多く、このところ全く更新してしないにも関わらず、毎日何人かはアクセスしているようである。あれで終わったわけではないのだが、プリンターズサークルに同じようなテーマで掲載している以上、Web用に考える余裕ははっきりいってない。また、内容もダブってしまうことは目に見えているので、あのあとを書くとしたら、プリンターズサークルの連載「営業ワンダーランド」の目処が立ってからということになるだろう。
「営業ワンダーランド」はやっと半分書いたので、あまりの不評で連載を下ろされるというようなことがない限り、あと6回分残っている。あとの連載はだんだんと「印刷営業マンよ、デジタルで武装せよ!」で書いていないような内容になるはずである。
話がそれてしまった。
というわけで、私のPAGE97は日帰りというスケジュールの中、けっこう忙しく立ち回り、プリンターズサークルの打ち合わせが終わると、もう5時を過ぎていた。
翔泳社の寺田さんに「今から行きます」電話をし、渋谷のサンシャインを後にし、原宿に向かったのであった。地図を頼りに翔泳社に辿り着き、会議室に案内された。寺田さんは校正中の原稿があるらしく、その仕事が一段落するまでしばらく待った。そうして二三世間話をしたあと、寺田さんは第3章の件を切り出したのであった。 |
このコンテンツは1997年10月23日に書かれたものです。 |
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