■01■ Illustratorの鉄則01:異なるバージョンでは開かない
Illustratorは異なるバージョンで開くと、レイアウトが保持されません。レイアウトの非互換は主にテキストです。しかしそれだけでなく、ダウンバージョンしたときも、トラブルが発生することがあります。Illustratorは作成したバージョンで保存し、出力するのが原則です。
あなた:印刷用のデータ作成でIllustratorを使うときに、最初に注意しなければならないことはどのようなことでしょうか。
マスターヨーダ:そうじゃな。印刷用のデータを作成する場合は、印刷用の高解像度の出力機から、正しく出力でできんといかん。PostScriptエラーなどがでないようにする必要がある。
あなた:なるほど。しかし、PostScriptエラーを完全に防ぐことはできるんですか?
マスターヨーダ:もちろん、完全には無理じゃろうな。しかし、同じバージョンのみを使うことで、エラーは少なくなるぞ。最初に作成したバージョンで開いて、変更したり修正したりして、ファイルを保存すればトラブルは少なくなる。
今では少ないが、かつて、5.5で作成したものを7.0で開いたり、それをまた5.0形式で保存して、5.5で開いたりすることしておると、出力できないことがよくあったのじゃ。
あなた:どうしてそんなことをするんですか?
マスターヨーダ:複数の人間がデータを使い回していると、全員が同じバージョンを持ってるとは限らんじゃろ。社内でも、マシンが変わると、Illustratorのバージョンが異なっていることもあるからのう。同じバージョンで作業し続けるのが一番なのじゃ。
あなた:バージョン違いで開いたとき、トラブルが起こる原因はなんなんですか。
マスターヨーダ:そうじゃのう。まず、上位バージョンから下位バージョンに保存したときとしよう。上位バージョンを9.0、下位バージョンを8.0とする。当然、9.0の透明などの新しい機能は、8.0には対応しておらんから、5.5で理解できるようにデータを変換するわけじゃ。
ところが、じゃな。Illustratorはバージョンが異なると、同じデータも同じ命令文を書くとは限らんのじゃ。そうすると、9.0でダウンバージョン保存すると、8.0で読めない8.0のaiファイルで保存される可能性があるわけじゃな。
あなた:しかし最近は、Illustrator 9.0や10.0で作成して、8.0にダウンバージョンし、それを8.0で開いてEPS形式で書き出して出力していることが多いと思うのですが...。あまり、そういうトラブルは聞きませんね。
マスターヨーダ:その通りじゃ。1度くらいであれば、たいていは大丈夫じゃが、異なったマシン環境やバージョンで開いていくと、出力エラーになるリスクは高くなる。下位バージョンとの互換性を、ベータテストで完璧に調べることは不可能じゃからな。9.0以降は内部的にPDFになっておるので、非互換の問題は少なくなっておる。
あなた:具体的に他にも注意したいことはあるんですか?
マスターヨーダ:あるある。Illustrator 9.0や10.0のドキュメントを、8.0で保存するときにも、トラブルはあるぞ。8.0から10.0までは、テキストエンジンは同じものが使われておるが、テキストの扱いでも注意点があるぞ。
たとえばじゃ。9.0ではATMの機能で、OpenTypeを利用することができる。しかし、8.0ではOpenTypeフォントを認識できん。9.0から8.0にダウンバージョンすると、OpenTypeは正しく表示できんことになるわな。ビットマップで表示されてしまうのじゃ。
*Illustrator 9.0でOpenTypeを指定し、Illustrator 8.0で保存したドキュメントをIllustrator 8.0開いたもの。OpenTypeフォントの小塚フォントがビットマップで表示されています。
あなた:なるほど、そうですね。フォントは認識しているようですが、ビットマップ表示になっていますね。他にもあるのでしょうか。
マスターヨーダ:あるぞ、フォントではなく、画像の処理でも、ダウンバージョンするとトラブルが発生するのじゃ。
あなた:ダウンバージョンすると、画像でもトラブルがあるんですか? どんなトラブルなんですか。是非、教えてください。
マスターヨーダ:それはじゃな。クリッピングパスを含んだ画像じゃよ。Illustrator 9.0でクリッピングパスを含んだ画像を貼り込んで、8.0形式で保存するとな、画像の貼り込みサイズが変わってしまうのじゃな。
[Illustrator形式オプション]で[配置した画像を含む]をオフにしたときに発生するのじゃ。オンにしているとPSD画像は埋め込まれるため、問題なく表示可能じゃ。また、変倍されてしまうのはPhotoshop形式の画像じゃ。EPSでは問題ない。
まあ、Illustrator 9.0でもリング画像では、PhotoshopEPSが使われておるので、とくに問題にはならんがな。最近は、実画像を表示できるPhotoshop形式を利用することが多くなっておる。Illustrator 9.0でPhotoshop形式を貼り込み、8.0でダウンバージョンする場合は注意せんとな。
あなた:なるほど、不用意にダウンバージョンすると、いろいろトラブルがあるんですね。
マスターヨーダ:その通りじゃ。ちなみに、クリッピングパスを含んだPhotoshop形式は、Illustrator 8.0では鬼門じゃ。Illustrator 8.0にクリッピングパスを含んだPhotoshop形式を貼り込んでPDF保存すると、その場合もレイアウトが変わってしまうのじゃ。
それから、この現象は、Illustrator 10から8.0形式にダウンバージョンしても発生せん。おそらく、Illustrator 9.0のバグじゃろうな。
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