いままで搭載されていなかったのは、イジワルなのかと思うのが[分版プレビュー]である。InDesignにはCSから搭載されているにも関わらず、IllustratorはCS4になってやっと搭載されたといういわく付きの代物である。
Illustratorこそ[分版プレビュー]が必要だった。InDesignはマルチページなので[分版プレビュー]で1ページずつ調べるのは大変だ(だから、ライブプリフライトになったのだろう)が、Illustratorでは[分版プレビュー]で十分だ。たとえマルチプルアートボードであっても、[分版プレビュー]の有無は大きい。
Illustratorドキュメントを印刷用に出力する際にトラブルになりやすいものは
フォント
透明
特色
オーバープリント
あたりが上位だろうか。トリムマークが付いていないという問題外は除くと、このあたりがトラブルになりやすいのではないか。
IllustratorCS4_bookimage100.gif フォントはアウトライン化してしまえば回避できる。通常はアウトライン化したまま保存することが多い。透明はIllustrator側で分割しておけばまず問題ないし、最近は透明はRIPで処理する方が確実な場合も少なくない。トラブルの原因にはなりにくい。特色は、CMYKであるにもかかわらず特色として指定されたものである。RIPでCMYKに分解できるが、手間がかかる。特に透明と特色を組み合わせると悲惨である。
オーバープリントも、RIP側である程度コントロール可能だが、一般的に事故が多いと言われている。Illustratorの場合は白オブジェクトにオーバープリント指定可能なので、問題をややこしくしている。墨ベタはRIP側でオーバープリント可能なことが多いが、すべて適切にオーバープリントされるとは限らないので、背面にオブジェクトがあって墨ベタのテキストが載っていたりすると、ノックアウトされて印刷されてトラブルが発生する。
[分版プレビュー]は、これらのIllustratorの印刷用トラブルの中で特色とオーバープリントのチェックを容易にするのだ。Illustrator CS4の[分版プレビュー]は、オーバープリントプレビューしていなければ使えない。オーバープリントしたまま、墨版の表示をオフにすると、ノックアウトされた部分がはっきりと区別できる。
「Illustrator CS4までのおいしい新機能活用講座」65ページより。
特色を調べるのは簡単だ。[分版プレビュー]を開くだけでよい。特色がリストされていたら、ドキュメント内に特色が含まれていることになるからだ。あとは、特色を1つ1つ変換するか、ライブカラーで特色を再配色するかスウォッチでCMYKに変換する。
特色はさらに興味深い。当たり前といえば当たり前だが、ダブルトーン画像はちゃんと特色に反応する。PSDでもEPSで貼り込んでも[分版プレビュー]で確認可能だ。Illustratorでグレースケール画像に着色した特色も弁別できるのだ。
「Illustrator CS4までのおいしい新機能活用講座」67ページより。
Illustrator CS4の場合は、当面PDFでの出力になるだろう。どのようなドキュメントでも、フォントはアウトラインし、透明はそのまま、特色とオーバープリントは[分版プレビュー]で確認しておけば、印刷上トラブルになりにくい出力が可能になる。墨版だけで作成したドキュメントも、[分版プレビュー]があれば十全のチェックが可能になる。Illustrator CS4の実用的な機能は、実は[分版プレビュー]なのかもしれない。
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