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その1 埋め込めるフォントと埋め込めないフォント
1―2 サブセットで埋め込む日本語のフォント

■転送データが大きくなるフルセット方式
 欧文ではこのようにフォントのファイルをまるごと転送することで、プリンタフォントレスでフォントを出力するようになっています。しかし日本語では、フォントのアウトラインデータは欧文の数十倍になるので、フォントファイルをまるごとプリンタに転送するのはかなり無理あります。1書体ならともかく10書体使ったドキュメントであれば、何十MBものフォントデータを転送しなければならないからです。
 高速のネットワークを使い、大容量のメモリを使えば、いまでも日本語のフォントファイルをダウンロードできますが、一般的には、実用的的ではありません。
 そこでプリンタフォントなしで日本語のような文字数の多いフォントを出力するために、考えられた方法が、サブセット形式でフォントを埋め込む方法なのです。
 サブセットというのは、フルセットに対するサブセット、という意味です。この場合の「セット」とは文字セットのことをいいます。文字セットは日本語のフォントに含まれている文字の組み合わせのことを言います。
 ちなみに基本的には、日本語の文字セットはJISの規格に準じていますが、全く同じではありません。一部で外字(JISで文字コードが決められていない文字や記号のこと)が採用されており、フォントのフォーマットによってこの外字の文字コードは違っています。PostScriptフォントとTrueTypeの文字化けの原因は、この外字として採用された文字セットと、その文字が割り当てられた文字コードの違いというわけです。

■使用されている字形を埋め込むサブセット方式
 さてサブセットというのは、フォントの全ての文字を埋め込むのではなく、一部の文字だけを埋め込むということです。つまりドキュメントで使用されている文字だけを埋め込むことをいいます。
 日本語では、よく使用する文字が決まっています。特にひらがなは、多用されますが、漢字はそれほど使われません。一般の文章で、漢字とかなの比率は30対70 程度です。漢字もひんぱんに使われる文字とまったくといっていいほど使われない文字がはっきりしています。第二水準の漢字はほとんど使われないといってもいいでしょうし、第一水準にしても、日常的に使われる文字は3,390文字のうち、その半分もあればいいところではないでしょうか。
 つまり日本語では、全てのフォントをダウンロードすると、全く使われない文字がダウンロードされてしまうことになるのです。しかもその分だけ、出力時間の多くかかってしまうことになります。
 Acrobatでは、そのドキュメントに使われているフォントで、指定されている文字(正確には字形)だけを埋め込むようになっています。そうすることで、必要十分な字形のみを埋め込み、ドキュメントのファイルサイズを小さくすることができるからです。
 サブセット方式でのデメリットは、指定されている字形だけしか埋め込まれないので、そのフォントのない環境では埋め込まれていない字形を修正することはできません。たとえばMacintoshの環境でタイプバンク明朝を埋め込んでも、Windows環境で開いたとき、埋め込まれたタイプバンク明朝の文字の修正はできません。埋め込みフォントの修正は、同じプラットフォームで同じスクリーンフォントがある場合に限られます。
 いずれ日本語のようなダブルバイト(文字コードに2バイト必要とするのでダブルバイトフォントともいいます)フォントでも、フォントファイルをまるごと埋め込ん(フルセットでのエンベッド)で、別のプラットフォームで文字の修正ができるようになるかも知れませんが、いまのところはサブセットで埋め込む方法しかないようです。



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