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いままでSCSI機器にならされていたものにとっては、FireWire(IEEE1394規格のアップルの商品名)は驚異の一言に尽きる。抜き差し自在の高速ストレージやドライバができれば、これほどありがたいことはない。
当初DV絡みの用途が取りざたされていたが、実際には、ハードディスクやMOドライブ、CD-Rなどの既存の用途からのスライドは思いのほか早いようだ。
しかし考えてみると、この進歩の激しいコンピュータ業界でSCSIが生き延びてきた長い時間を振り返ると、よくがんばったなぁ、と感じざるを得ない。が、やはりそろそろ高速データ転送規格の主役の座は降りるべきかもしれない。もちろんSCSI
はまだまだ進化しそうだし、WindowsでもSCSIはなくてもならないようになってきたが、それでもホットプラグの魅力にはかなわない。
それにしてもいままで何故、ホットプラグができなかったのだろうか。技術的には、もっと昔にできていてもよかったはずではないか。いままでそういうことはできないと思い込まされていた我々は本来あるべき姿を知ったというべきだろう。
いまのところ低速はUSB、高速はFireWireという具合に使い分けるとされているが、USBも高速化を図っていて、FireWireとの競合もあるかもしれない。インテルを中心とするUSB推進派は、来年度中には480MbpsのUSB
2.0の規格を商品化する予定で、これがFireWireのライバルになる。といってもどちらかに統一せず、棲み分けられる可能性がもっとも大きいかもしれない。いずれにしてもホットプラグは当然に仕様になっていくだろう。
Yosemiteに付けられているFireWireは最大400Mbpsまでをサポートする。正確には100、200、400Mbpsの三種類の転送速度をサポートしている。今後の仕様としては、800Mbps、1.6Gbps、3.2Gbpsあたりまでが取りざたされているが、あくまで青写真にしか過ぎず、いつ頃にそういった高速の転送が実現できるかはまだまだ見えない。
しかし当初は100Mbps対応がほとんどだったのが、いまでは400Mbpsのデバイスも登場している。こうしてFireWireデバイスが普及していけば、高速化にむけた勢いはけっこう早いかも知れない。
さて100Mbpsは、単純に換算すると1秒間に12.5MBの転送速度ということになる。400Mbpsでは50MBになる。もちろんこれは理論値なので、実際のスピードはもっとも遅いはずだ。SCSIでも実際には理論値の半分もあればいいほうだから、FireWireも同じようなものだろう。
実際に発売されているFireWireのハードディスク(400Mbpsに対応したもの)でも、ベンチマークテストでは、NewG3/350の内蔵のIDEハードディスクから、外付けのFireWireのハードディスクにデータを転送すると、1秒間に約3MB(1ファイルの場合)といったところである。同じ仕様の作業をUltra
2 SCSI(理論値40MB/ps)ではほぼ倍の6MBになっているから、データ転送のパフォーマンスは思ったほどではない。もちろんこのテストでは内蔵のハードディスクを読み込む時間がかかっているの分だけ遅いため、FireWireハードディスクの純粋なパフォーマンスではない。
しかし実質的には400Mbps対応であれば、UltraSCSI程度のパフォーマンスはあると考えいいわけで、それでホットプラグの恩恵を受けることができるのであれば、FireWireの魅力はいやがおうでも増すに違いない。
FireWireは転送速度からいうと、ほぼSCSIのパフォーマンスに追い付きつつあるといってもよい。価格的にも、SCSIの外付けハードディスクと比較したときもうそれほど差は無くなっている。少なくともこれからは外付けハードディスクは確実にFireWireになるだろうし、MOドライブやCD-Rも着実にFireWireが主流になっていくに違いない。
ただしこれだけは、実際に使ってみてホットプラグの便利さを体験しないことには理解できないものかもしれない。いままで馴染んだSCSIに飼い慣らされた私たちのビヘイビアはすぐさま変わるわけではないが、それでも一度使えば、SCSIに戻れないこともまた確かなのである。
FireWireの可能性は、まだもうひとつある。それはFireWireをネットワークとして使うことである。現在IP over
IEEE1394というインターネットプロトコルで通信する規格が進んでいる。その場合、400Mbpsで一つのパケットサイズが2048バイトとなっているが、これはEthernet上のTCP/IPのパケットサイズより大きい(Ethernetは1500バイト程度)。まだ全ての詳細が明かになったわけではないが、パケットサイズが大きくなると、ネットワークでのワイヤースピードは間違いなく高速化する。
もちろんEthernetもギガビットの時代が見えてきたので、すぐさまネットワークの標準仕様の座を奪われることはないにしても、FireWireが800Mbpsや1.6Gbpsになったとき、NetBootはFireWireで、ということになる可能性は決して少なくないのではないだろうか。 |
「DTP-Sウィークリーマガジン 第34号(1999/10/02)」掲載
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