■EPS/DCSを利用する
高速出力のためのもう一つの方法は、画像データをEPS/DCS形式で保存して、Illustratorに配置する方法です。
EPS/DCS形式は画像データをあらかじめ、四色分版のデータとして分けて保存しておき、出力時に分版されたデータのみを処理し、転送するためのフォーマットです。このフォーマットはQuark社がQurakXPressでの分版出力を高速化するために、開発したフォーマットです。PageMakerなどの他のページレイアウトソフトではこの形式に対応していますが、IllustratorはEPS/DCS形式には対応していません。
画像データをEPSで保存するときに、DCSをonにするかoffにするかを選択できます。DCSをonにするとCMYKの各版の分けられた四つのファイルとプレビュー用のファイルの五つのファイルが作成されます。プレビュー用のファイルにはファイル名がそのままつきますが、他の四つのファイルにはファイル名の後ろに、シアン版ならば「.C」と表示され、分版色が分かるようになっています。一般的にDCS形式のファイルを貼り込むにはプレビュー用のファイルを貼り込みます。
普通llustratorで出力する場合はDCSはoffにしなくてはなりません。IllustratorにDCS形式のファイルを配置すると、配置したファイルだけを参照し出力します。プレビュー用のファイルを配置してあると、プレビュー用の画像のみを貼り込んで出力します。プレビュー用の画像はPICT形式の72ppiのデータなので、元データが350ppiあっても72ppiのデータとして出力されます。
このDCS形式の特性を生かして、スキャンニング時にDCS形式で保存し、プレビューデータをIllustratorに貼り込むようにすれば、出力時には72ppiの低解像度のデータをプリンタに転送するのでプリンタ出力のための処理転送時間を軽減できます。
この方法のネックはフィルム出力をどうするのかということです。DCS形式の画像データを配置したIllustratorのファイルは出力できません。正確にいうと、出力できますが、プリンタと同じく72ppiのプレビューデータのみを出力するので使い物にならないのです。
フィルム出力するためには、二つの方法が考えられます。ひとつは画像ファイルを再度開き、DCSをoffにしたEPS形式で画像ファイルを保存し直す方法です。フィルム出力時に画像ファイルのDCSをoffして、画像ファイルを差し替えてフィルム出力します。もうひとつの方法は、画像のフォーマットはそのままにして、QurakXPressやPageMakerなどのページレイアウトソフト上で画像データのみを貼り込み直す方法です。 ひとつめの方法の欠点は、フィルム出力に大変時間がかかることです。また画像のデータ量が莫大になると出力できないこともあります。画像データを配置したIllustratorのEPS形式のデータ量が100MBを越えるようであれば、フィルム出力のため時間は無視できないほど長くなります。四色分版するのであれば、データが100MBあればその四倍の400MB程度の処理をする必要があるのです。
もうひとつの方法をとってDCS形式を生かすためには、QurakXPressやPageMaker上でもう一度貼り込み直します。まずIllustratorから画像データを削除し、そのファイルをEPS形式に保存し直して、そのままQurakXPressやPageMakerのドキュメントやパブリケーションに作成した画像ボックスに貼り込みます。その上で画像データをページレイアウトソフト上に作成した別の画像データとして貼り込みます。この方法の欠点は画像データを寸分違わずに貼り込むことが大変難しいことです。また画像とIllustratorで作成したオブジェクトが重なり、前後関係が輻輳しているとうまく貼り込めないこともあります。
出力を考えてDCSを使うのであれば、Illustratorである程度作成したデータをページレイアウトソフト上に貼り込み、画像データは最初からページレイアウトソフトで貼り込むほうが無難かもしれません。ページレイアウトソフトの場合、DCS形式で高解像度データを貼り込んであれば、プリンタ出力では低解像度データを転送して出力することが可能になっています。
いずれにしてもDTPで作業する場合、フィルム出力まで考えてワークフローを組み立てるべきでしょう。 |
●EPSでDCSをonにする |
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●DCSをonにすると作成される5つのファイル |
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◎STP/Photo.Cのデータを開く |
◎STP/Photo.Mのデータを開く |
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◎STP/Photo.Yのデータを開く |
◎STP/Photo.Kのデータを開く |
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※DCSは分版用のデータを別々に作成して、別のファイルとして分離する方法です。この形式に対応していると、出力のラスタライズ時に分離された分版データのみをラスタライズするので、画像の処理が1/4で済みます。Illustratorに付属するSeparatorでは分版出力できても、分版のラスタライズために画像データを全て処理し、必要とする分版データを作成します。従って、カラーの四色でSeparatorで分版処理すると同じ画像データを四回ラスタライズすることになります。DCSの分版ファイルはCMYKの分離されたデータがグレースケールで作成されます。 |
●DCS利用する その1 |
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●DCS利用する その2 |
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●DCS利用する その3 |
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●QurakXPress3.3Jの用紙設定 |
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※ファイルメニューの[プリントジョブ...]のダイヤログより用紙設定を選択します。プリント:は「カラー/グレースケール」、出力:は「PICT画像」、OPI:は「画像を含む」、カラー:は「カラーのグレイ出力」をチェックします。これでモノクロプリンタのラフ出力を行うことができます。 |
●PageMaker5.0Jの用紙設定 |
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※まずセレクタでLaserWriter8を選択し、出力するプリンタのPPDファイルを設定します。ファイルメニューより[プリント...]でオプションをクリックして、グラフィックの「低解像度で出力」をonにしてラフ出力を行います。
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○参照 Adobe Illustrator
お茶の子サイサイ7-11 QurakXPressに貼り込む |