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▼ 標準 DTP出力講座 フォント攻略編 まえがき |
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3月23日まではまだ時間があるな、とのんびりしていると、なんと一週間も早い16日に、寺田さんからメールがやってきました。23日までは日数がありすぎるので、別の会議にかけて企画を通した、とのことでした。思いもかけない朗報に、驚き喜ぶばかりでなく、これは頑張らねばならないと思いましたね。
寺田さんのメールには「9月刊行予定(遅くとも8月下旬入稿)守るように」とあり、逆算すると、「わぁー、8月末までに入稿かぁ〜」。そうなると5月中くらいにテキスト原稿は作らないといけなくなる。2ヵ月半、これはきつい。
案の定、テキスト原稿は5月末までで、できたのは3章まで。5章には遠く及ばなかった。自分で書きたいと思っていたテーマであるにも関わらず、実際書き始めてみると、結構試して実証してみないと、何とも言えないものがありまして、書くテーマが決まっていても、筆が思うように進まないんですね。困ったもんだ。
で、結局4章が書き上がったのが、なんと7月9日で、5章はそれにさらに遅れて、8月24日なんですね。レイアウトデータ入稿すべきあたりまで、ずるずると伸びていったのです。
遅れたいいわけをするときりがないのでしませんが、フォント出力のテーマで一冊の本になるくらいの内容が、私の頭のなかにはあると思っていたのが、書き始めてみると、結構内容が足らなかったと言うことでしょう。そのあたりを調べたり、試したりしているうちに、時間がどんどんと過ぎていったようです。
ですから、その分、つまり私が調べたり試したり考えたりした分だけ。より中身は濃くなっていると、私は一人で納得しています。取りあえず今知っていることは全て書いた、と思っています。確証のもてないもので取り上げなかったものもありましたが、この本一冊で、フォントの出力に関わる大半の知識やノウハウを取得できると思っています。
最初の章は「CIDフォントフォーマットはなぜ必要か?」というタイトルで、CIDフォーマットの中身を解剖しました。けっこうこれが面白くて、調べながら「なるほど!」と思うようなことがたくさんありまた。
CIDフォントを理解する鍵の一つは、システムフォルダ内の「Common」フォルダにある「CMap」ファイルです。これはテキスト形式で記述されていますが、UNIX環境で作成されたようで、普通のテキストエディタでは開きません。ところどんなファイルでも、テキスト形式で開いてしまうエディタを使うと、なんと、中身が見れるのですね。そのままでは、よくわからないので、それをもう一度Jeditで開くとも普通に読めるファイルになるわけです。
これを読んでいると、CMapが文字コードをCIDコードに変換する仕組みが見えてくるんですね。「ああ、こういう方法で、文字コードを変換しているんだな」ということがわかります。確かにこの方法であれば、文字コードが複雑になっても、たいていの文字コードは、CMapの変換テーブルさえあれば、CIDフォントがあれば解決するということは、Adobeの言うとおりかも知れません。
本のなかではちゃんと書けませんでしたが、現在のCIDフォントの文字セットは8940文字(少し違うかも知れない、ちょっと自信がない)あり、これを「Adobe-Japan1-2」と呼ぶわけです。いまのところこれで、Macintosh環境とWindows環境で使われている文字と記号は全て含まれていることになります。正確には、WindowsのIBM拡張文字のなかには、変換されないものもあるらしいですが、まあ、たいていのドキュメントで使われている文字は、CMapで変換できれば、CIDフォントは表示印刷できるわけです。
「標準DTP出力講座 フォント攻略編」では、CIDの文字コード変換の仕組みをバッチリと書いています。自分で言うのも変ですが、やっぱり私はDTPオタクかもしれへん…。
もちろんついでにIllustratorの[字体切り換え](正確には字形切り換えだという意見あり、私もそれに従った)も、Illustratorが直接CIDコードを指定していることも発見しましたね。字体の切り換えのトピックでは、さらに深く掘り下げて、JIS規格の字体問題にまで言及してあります。
CIDフォントが発売されて、もう1年以上過ぎたわけですが、最初の嵐のようなブーイング(私も参加してたか?)で、AdobeからもモリサワからもCIDフォントフォーマットに関する、かなりのボリュームの資料が公開されました。たしかに当初問題があったし、今でも、絶対にないと言うわけではないでしょう。この間のお便りのコーナーにあるような、QuarkXPressでの縦組みしたときの文字の起点の変わってしまっている問題(IllustratorやPageMakerでは起こらない)などのように、これから見つかるものもあるかも知れません。
しかしとはいえ、プリンタ環境から徐々にCID環境に変わっていくのは確かで、これを避け続けることはできないでしょう。いずれ、スクリーンフォントも、CIDフォントを使わざるを得なくなるでしょう。そのときには、やっぱりCIDフォントの正体を知っておかないといけないと思います。「幽霊の正体見たり枯れ尾花」なんて諺もありますからね。仕組みさえ知っておけば、CIDフォントフォーマットはちっともこわくないと思います。
そのうちCIDフォントでもバージョン違いが出てくるかも知れません。たとえば、補助漢字を加えて「Adobe-Japan1-3」とかになって、次に第三・第四水準を加えて「Adobe-Japan1-4」とかになったりするわけ可能性はあります。多分そうなると、同じフォントでも「Adobe-Japan」のバージョンによって、出力できる文字が違ってきて、価格も違ったりするんですね。それで印刷会社はやっぱり一等高いバージョンを買わないといけないようになっていたりしてね。ま、いずれそういうふうに使い分けられるのんではないか、と思ったりします。
いまトラブルを起こさないようにするためには、いままでスタンダードで使ってきたフォントはいままで通り、OCFのままで使い、それ以外のフォントはCIDフォントにしていくという方法です。いままでどおりのドキュメントはOCFを使っておき、CIDにしなければならないものは、OCFフォントと同名のCIDフォントは使わないようにするわけです。私もタイプバンクフォントをなどいくつかのCIDフォントを使っていますが、OCFとの互換の問題さえなければ、CIDフォントは快適です。
それ以外にも盛り沢山の「CIDフォントフォーマットはなぜ必要か?」は、何と全60ページもの大作です。是非これからのあなたのDTPライフにお役立てください。
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このコンテンツは1998年11月27日に書かれたものです。 |
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