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16.グラフィック社からの依頼来たる


 レイアウト作業は、結論からいうと、第1章と第2章は5月中にほぼ終わった。引き続いて第3章以後を6月中に行なった。原稿のチェックは第4章は送られてきたものの、第5章、第6章は送られてくるのを待たず、手元にある原稿だけでレイアウト作業を進めた。このあたりになるとトピックの最初に2〜3行のリードを入れて、トピックの内容を分かりやすくするというような大まかな構成は決まってきたので、あとはレイアウトされてもので見てもらったほうが早いと判断し、どんどんと作業を進めたのである。
 私の2冊目として発行された「イラストレータ実戦マスター」の発行元、グラフィック社からのお誘いがあったのは、ちょうどこの頃であった。
 5月の初旬に編集担当者とお会いして話を聞いた。グラフィック社からは早川廣行著の「印刷・出力実戦マスター by Photoshop」という本が発行されており、それのIllustrator版を作りたいというお話しであった。早川さんの本はいままで何度も紹介したが、このころドットゲインのついて興味を持っていたころで、早川さんの本がもっともドットゲインについて詳細に述べられていることを私は知っていた。なるほど、と思った。 Photoshopの次にはIllustratorをターゲットに考えたわけだった。Illustratator本もまた数多出版されているが、やはりこれも出力について扱った本はほとんどないので、そういう出版の企画を考えるのは自然な発想なのかも知れない。
 もちろん私は一も二もなく了解した。Illustratorの出力の本ということは、DTP-Sにアップした「Adobe Illustratorお茶の子サイサイ」をベースに書き直すという風に理解すれば、願ってもないオファーであって、断るべき理由は微塵もなかった。もちろんあのままではなく、一から書き起こすという作業が必要だったが、Illustrator7.0Jのリリースが目前だったそのときにはそれに合わせて書き直すというのは当然のことだった。
 さて「印刷・出力実戦マスター by Photoshop」は数多いPhotoshop本の中でもかなりハイレベルな内容で、Photoshopの使い方を知るという程度ではなく、Photoshopを骨の髄まで使いこなしてやろうという思いで作られた本である。もちろんそれは私の感想だけかも知れないが、実際に出力し色校正を上げて実験して作られた重厚な内容は、他には決して見られないものだ。何度も言うがあの中の「実戦マスターインキ設定」は、あれだけに本代を払ってもまったく損はしない代物である。いや、あのインキ設定を公開するためにこの本は作られたのではないかと思うことすらある。
 というような早川さんの本に釣り合うようなIllustrator本が、私に書けるだろうか。一瞬躊躇したものの、その旨を伝えると、できれば図版を多用して平易なものがといいという。テーマをとことんまで突き詰めていくというより、できれば分かりやすくしたいという要望であった。もっと言うと、本文を読まなくても、図版とキャンプションを見ていけば大体理解できるようなものにしたいということだった。「標準 DTP出力講座」ときは、わかり易くするために見出しを工夫したように、今回は読むことではなく図説することでわかりやすくしようという意見だった。
 そうかそれならできるかな、と思ってしまったが、図説だけでわかりやすくすることもそれほど簡単ではない。まあでも「標準 DTP出力講座」を作っていく中で、言いたいことを図説するという思考方法が少しは身に付いたと思ったりして、そういう方向で何とか頑張ってみようと納得したのであった。
 それでその後少し経ってから、編集者の方から連絡があり、その月の末に編集会議があるので、2ページばかりサンプルを作って欲しいという依頼があった。すぐさま2ページばかりでっちあげ、グラフィック社に送った。編集会議の後、すぐにメールがやってきて、会議でスムーズに了承されたという。「11月25日完成に向かって前進しましょう」という納期付きだった。というわけで、「標準 DTP出力講座」の後ももう一本書けることになった。
 私の思惑どおりに、7月中に「標準 DTP出力講座」の片がつけば、まあ大丈夫だろうと高をくくっていた。入稿の締切は9月末で、それで11月25日の発行は大丈夫と聞いていたので、8月9月の2ヵ月あれば、十分書けると踏んでいた。体裁はB5で160ページといいつつも、是非Illustratorに付属するフォントの見本帳を付けて欲しいと要望し、それを聞き入れて貰えたので、実際に書くというより、構成を考えないといけないページは110ページ程度であり、「標準 DTP出力講座」を書いたときのペースで言えば、それほど無理な納期だとは思わなかった。レイアウトはグラフィック社の方でするというので、レイアウトをするという作業はない。2ヵ月あれば十分だと思えたのである。
 というわけで、グラフィック社の執筆依頼は受けたものの11月25日はまだまだ先のことだし、取りあえずいま目先にある作業を片付けることに専念することしかないと思ったのだった。
 公開して1年あまりに間に、二つも執筆の依頼が来るなんて、インターネットはスゴイゼなとど思っている暇はなく、レイアウト作業という現実が私にのしかかってくる。何本執筆の依頼が来ようとも、最初の「標準 DTP出力講座」のレイアウト作業が終わらないと、次の本のことなどは考えられるわけはない。6月12日は取りあえず適当に考えた目次をグラフィック社に送ったものの、頭の中には「標準 DTP出力講座」のことしかなかった。まず「標準 DTP出力講座」のレイアウト作業を完結させること、それがそのときのすべきことの全てだった。



このコンテンツは1998年1月27日に書かれたものです。

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