DTPは、グレースケールから始まった。グレースケールというより、テキストのみのモノクロ二階調である。テキストを高品位にデスクトップから出力するために生まれた。その後、ハーフトーン出力が可能になり、PostScript レベル2ではカラーに対応した。
カラーに対応してからは、DTPアプリケーションはCMYKデータ作成ツール化した。カラーの印刷用ドキュメントの作成に特化して進化してきた。その中で取り残されてきたものが
特色
グレースケール
である。特色はともかく、DTPの中でグレースケールが置き去りにされてきたというと、「それは違うのではないか」といぶかる方もいるだろう。グレースケールの場合は、最初からグレースケールでドキュメントを作成すればよい。すべてグレースケールもしくは、CMYKの墨で作成されていればいいからだ。
たしかにその通りである。ここでいいたいのは、カラードキュメントのグレースケール化である。テキストだけのドキュメントであれば、最初からグレースケールモード作成すればよい。しかし、実際にはカラーで作成しているにも関わらず、グレースケールで印刷するものは少なくない。
デザイナーやオペレータが、すべてのオブジェクトをグレースケールで作成しているとしても、誤って、カラーモードでオブジェクトを指定していることもある。そういう場合は強制的にグレースケールへの変換が必要になる。そのとき、適切な変換、プロにふさわしい高品質な変換はされているのだろうか。
Illustratorで作成したCMY
Illustratorで変換すると
Acrobatの[色を置換]で「Dot Gain 15%」で変換
Illustratorでは機械的にグレースケール化する。「Dot Gain 15%」でプロファイル変換すると、グレースケール値が異なっている。カラー濃度によっては、Acrobatでの変換で濃度差がなくなり、Illustratorでのグレースケール変換で濃度差が現れることもある。
たいていの場合、カラードキュメントは出力機のRIPの機能でグレースケール化されることになる。つまり、成り行きである。たとえば、プリンタのグレースケール変換機能を利用すれば、カラードキュメントはグレースケールとして出力される。そのプリンタのグレースケール出力と、出力機のグレースケール変換は同じものではない。プリンタでは適度な濃度だったのが、出力して印刷すると画像の濃度が浅くなっていることもある。
事務的な書類であればそれでもいいが、印刷物として配布する場合、たとえグレースケールであっても、見た目には注意したい。それがプロではないか。それを果たすためには
カラードキュメントはアプリケーションでグレースケール変換する
グレースケール変換のコントロールを行う
高品質なグレースケール変換のスキルを身につける
ことが必要になってくる。高品位なグレースケールドキュメントを作成するノウハウと、カラードキュメントを高品位にグレースケールに変換するノウハウが必要ではないだろうか。そういうノウハウをまとめた本を書いてみたいものである。
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