Photoshopとカラーマネージメントの仕組みと出力講座:印刷用のCMYK変換からDTPファイルの保存
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 「カラーマネージメントは難しい」と思っていませんか? 専門用語が飛び交い、成果もわかりにくいと思っていませんか。確かに「カラーマネージメントしなくても、DTPはできる」かもしれません。

 とはいえ、カラーマネージメントは「常識」になりつつあります。カラーマネージメントがわからないと、CMYK変換もできないようになります。オフセットでも枚葉印刷するときと輪転機で印刷する場合では、CMYK変換のプロファイルも異なります。

 ここでは、難解に見えるカラーマネージメントを、できるだけ「やさしく、わかりやすく」解説します。




▼第2章 Adobe Color Engine入門ガイド



■2-4 CMYK作業用スペースはターゲットCMYK

 RGBの作業用スペースは、さまざまなRGBを集約するためのものです。そういう意味では、PSC(Profile Connection Space)として機能していました。簡単に言うと、とりあえず、「どんなRGBもAdobe RGBにしましょう」ということです。

 それではCMYK作業用スペースは、複数のCMYKをコネクションするためにあるのでしょうか。統一したCMYKスペースにするためのものでしょうか。まあ、そういう使い方もありますが、基本的にはそうではありません。印刷したときのカラースペース、それが、CMYK作業用スペースです。

 作業用スペースのCMYKとグレースケールは、印刷したときのカラースペースを割り当てます。ここで割り当てたカラースペースでモニタに表示できるのです。つまり、シミュレーションしたいCMYKやグレーを指定するのです。

 たとえば、CMYKの画像をPhotoshopで開くとしましょう。印刷機は「Japan Color 2001 Coated」だとします。Photoshopは、画像のCMYK値を算出して、それを「Japan Color 2001 Coated」のプロファイルでLab値に変換します。そのLab値を今度は、モニタのプロファイルのLab値にマッチングさせて、モニタ表示するRGB値を算出します。

 モニタに表示されるカラーは、Lab値から算出されていますので、モニタプロファイルが正確であれば、モニタには「Japan Color 2001 Coated」が再現されることになります。

 もちろん、完璧というわけではありません。CMYKよりRGBの方が概ねカラースペースは広いのですが、CMYKに再現できてもRGBで再現できないカラースペースもあるからです。しかし、そういうカラーはごく一部ですので、印刷したときのカラーは、作業用スペースで指定したときに確認することができるといえるでしょう。

 CMYKを正確に表示するためには、モニタ環境も重要です。より広いカラースペースをもったモニタを利用し、モニタプロファイルを正確に作成する必要があるからです。モニタプロファイルがカスタマイズされていなければ、ここにターゲットCMYKを割り当てても、ほとんど意味はありません。

 なお、モニタプロファイルのLab値を経由するのは、RGBも同じです。RGBスペースもLab値に置き換えられ、モニタプロファイルでカラーマッチングしてもモニタに表示します。

 カラースペースが広く、正しいモニタプロファイルで運用していれば、メーカーや機種の異なる場合でも、同じCMYKスペースを割り当てていれば、モニタでの表示は同じものとなります。

 さて、CMYKでも、複数のコネクション用スペースとして利用することはあります。たとえば、同じ絵柄の印刷物を枚葉のオフセット印刷機で印刷し、片やオフセット輪転機でも印刷するような場合です。枚葉とオフ輪では、CMYKのカラースペースは同じものにはならないからです。

 枚葉でもオフ輪でも同じカラーで印刷するには、いずれかのカラーをもう1つのカラーに合わせるしかありません。そのまま印刷すると、CMYK値は同じでも、Lab値が異なるため、同じ印刷結果にはなりません。

 基準にするカラーは、ガモット(色域)の狭い方に合わせます。ガモットの狭い方に合わることで、狭いカラースペースで再現できないカラー領域がなくなるからです。逆にすると、当然狭いカラースペースで再現できないカラー領域はカラーマッチングできないことになります。

 枚葉用に「Japan Color 2001 Coated」、オフ輪用に「Japan web Coated (Ad)」を使う場合を考えてみましょう。両者を比較すると、オフ輪用の「Japan web Coated (Ad)」の方がガモットが小さいので、そちらに合わせます。つまり、「Japan web Coated (Ad)」がCMYKのPCSになるわけです。枚葉での印刷では、「Japan web Coated (Ad)」からLab値を維持して、「Japan Color 2001 Coated」に変換したもので印刷します。

 もし、再現したいカラーが枚葉の「Japan Color 2001 Coated」だとすると、オフ輪用のデータは、「Japan Color 2001 Coated」からLab値を維持して、「Japan web Coated (Ad)」に変換したものを基準カラーとして使います。ただし、その場合は、「Japan Color 2001 Coated」で表現できていたカラーが失われることがあります。

 もし、それは別に、ポスター用などにインクジェットプリンタからの出力もあるとしましょう。その場合でも、カラーマッチングを優先させるのであれば、インクジェットプリンタでも、作業用スペースには「Japan web Coated (Ad)」を割り当てて、印刷時にインクジェットプリンタのICCプロファイルで変換して出力します。

 広いガモットを、狭いガモットに変換すれば、失われるカラーが生まれてしまいます。カラー再現の方針を明確にしていれば、オリジナルのカラーを生かすのか、それとも、印刷方式によるガモットの違いを反映させないのかははっきりできます。

 重要なのは、基準となるカラースペースを決めることです。そして、それをCMYK作業用スペースに割り当てることです。あとは、印刷方式、出力方式に合わせて、Lab値を維持して、カラー変換すれば、CMYKでのカラーマネージメントが可能になります。

 グレースケールやスポットカラーの場合は、カラー変換することはありません。ここでの違いはドットゲインの違いです。ドットゲインが異なるケースは、印刷方式が異なる場合です。オフセット印刷でも、水無し平版では、ドットゲインはほとんど発生しませんし、軽オフセットでは、オフセットよりドットゲインは大きくなります。いずれも、基準となるドットゲイン値を決めて、それに合わせて変換したものを利用することで、墨の濃度をマネージメントすることができます。

DTP-Sウィークリーマガジン/224号/2005.9.5配信




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