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ACEアプリでするローコストカラーマッチング実践講座
上高地 仁 著/A5/128P/2003年5月23日初版発行/インクナブラ 刊行
プリントアウト用やクリーンブラウズ用PDF、検証に使用したファイル一式が収録されたCD付
定価:7,140円(内税:340円)
一般販売価格:7,140円 DTP-S倶楽部会員価格:6,300円

目次あとがき推薦のお言葉PDFの先行ダウンロードとお申込みサポートページ


あとがき

かつてのカラーマネージメントはお金がかかった
 もともとカラーマネージメントには興味がなかった。興味がないというより、手の届かないところにあるもので、DTPしていく上で必要条件ではなかったのだ。なくても、やっていけたのである。
 当初のカラーマネージメントシステムとか、カラーマネージメントメソッドといわれるものは大がかりのなものが多く、とても煩雑な方法をとるか、専用のデバイスを必要とするものであった。一般のDTPユーザーが手軽に取り組めるものではなかった。
 いずれにしても、モニタのカラーを合わせるのも、プリンタのカラーを合わせるのも、コストのかかるものだったのだ。かけたコストに見合うだけの価値があるかというと、なかなか難しい。見合うのは、一部の限られたユーザーのみということになるだろう。
 DTPではカラーは合わないもの、そういうスタンスで取り組むのが普通で、カラーの確認は色校正でするものだったのである。といっても、モニタで全然合わないわけではないので、モニタの表示を印刷結果に勘ピュータで調整して利用できたのである。
 また、カラープリンタの普及ともに、カラーマッチングされていないプリンタ出力でも色校正代わりになった。もともとはカラーカンプ程度のものであったが、印刷物の品質によっては色校正として通用したのである。
 カラープリンタで色校正したいと誰もが思ったが、簡単にできる方法はなかったのである。

カラー設定は「ブラックボックス」か?
 はじめて、カラープリンタのプロファイルを使ってカラーマッチングしたとき、プリンタ出力とモニタ出力が合致するのをみて、正直言って驚いた。
 「プリンタのプロファイルがあれば、モニタで見たままを出力できるんだ」と認識を新たにしたのである。
 アプリケーションの機能を利用すれば、カラーマッチングはできるようになっていたのである。そこから、手軽にローコストでできるカラーマッチングの探求が始まった。
 アプリケーションの機能でモニタとプリンタカラーを合わせるカラーマネージメントといっても、ICCプロファイルの仕組みを利用して行っているわけで、仕組みとそしてそれほど複雑ではないと考えていた。
 「Labを維持したまま、デバイスカラーを変換する」
 というごくごく単純な仕組みなのに、それを躰で覚えるには、多くの試行錯誤が必要だった。というのは、アプリケーションの内部でLab値がどのように処理されているのかはわかりにくく、どのような状況においてもLab値で変換されるとは限らないからであった。Illustratorではプリンタ出力時に、プロファイルを割り当てても貼り込んだEPSファイルはカラー変換されないが、そういうことはどこにも書いていない。手探りで検証していくしかないのである。
 また、昨今はカラーマネージメント関係の書籍や記事が多く出回るようになった。とはいえ、アプリケーションレベルでのカラーマネージメントについて書かれてものは多くない。ごく一部の人のみが理解し利用しているだけで、多くのDTPユーザーにとっては、正体がわからないブラックボックスではないだろうか。アプリケーションでするカラーマネージメントは回避するほうが安全なものだったのである。

「印刷用で使うときはガンマを1.8にする」
 すべてはPhotoshop 6.0のカラー設定から始まる。正確にはIllustrator 9.0の方がリリースはすこし早いが、アプリケーションでのカラーマネージメントはPhotoshopが基本だろう。
 Photoshop 6.0のカラー設定がわかれば、Adobeアプリケーションで行う、つまり、Adobe Color Engine(ACE)で行なうカラーマネージメントは理解できるし、同等のカラー設定を持つAdobeの他のアプリケーションでも、同じようにカラーマネージメントしてカラーマッチングすることができるのだ。
 それをできるだけわかりやい形にできないかと考え、書き上げたのが本書である。思い立ったときは、アプリケーションの動作を整理するだけなので、それほどかからないと思ったが、本にするとなると正直言ってわからないことが多く、整理には手間取った。
 たとえば、モニタのガンマは「印刷用が1.8である」と書いてあるが、多少は当て推量である。隠さないで書いておくと、すこしばかり予断が含まれている。
 カラーマネージメントをついて書かれた本にいくつかには、印刷物のガンマ値が「1.8」であると書かれており、印刷物にもガンマがあることを教えてくれる。このときのガンマ値というのは、印刷物を濃度計で読みとったときのものである。
 印刷物にはドットゲインという網点が太る現象があり、画像データについてはPhotoshopがRGBからCMYKに変換するときにその分を間引いているのである。しかし、印刷された網点を計測したとき、それでも中間調が濃くなっているというのは、ドットゲインとは別に濃淡に影響を与えている要素があることになる。
 実は、ドットゲインは二種類あるのだ。印刷時に物理的要因でに網点が太る現象と、印刷物を視認したときに光の反射などで濃く見える光学的なドットゲインがあるとこが知られている。Photoshopで補正されるドットゲインが物理的ドットゲインのみだとすると、光学的なドットゲインは補正されていないことになる。それが、いわゆる印刷物のガンマ値だと考えると、すべて辻褄が合うのだ。
 残念ながら、これについては状況証拠しかないが、おおよその仕組みには相違はないだろうと思い、断定的な書き方にしたのである。また、Macintosh・Windows問わず、

 「印刷用で使うときはガンマを1.8にする」

 という方が理解しやすいからである。実際にWindowsでも、ガンマを「1.8」にした方が、モニタに表示しているデータと印刷物の濃淡とはマッチングする。ということは、MacintoshでDVDをみるときは、ガンマ値は「2.2」にすべきなのである。
 「CMSガイドブック」が底本
 カラーマッチングの参考書は増えてきたとはいえ、それほど多くない。その上、カラーマッチングに関わる要素は多いので、簡潔に整理することは難しい。マンセルとか、CIEとか、xy色度座標といった理論から入ると、
 「具体的にどうすればいいのか」という結論にたどり着くまでにくたびれてしまいそうである。
 本書ではPhotoshop 6.0がリリースされたときに、アドビシステムズ主催のセミナー等で配布された「CMSガイドブック」を底本とした。もともと「ACE」というのはAdobe製品に組み込まれたものであり、アドビシステムズから正式に配布されたものを使うのが間違いないからである。それ以外の参考書と書かれているニュアンスが異なるときには、基本的に「CMSガイドブック」の記述を優先した。
 ただし、「CMSガイドブック」でも、理屈に合わないところは採用していない。たとえば、ガンマの解説に「デスクトップスキャナ ガンマ1.0」と書かれているが、普及価格のCCDのスキャナのユーザーズガイドにも「ガンマの標準値には、スクリーンキャリブレーションの結果が(ディスプレイにあわせたの数値になるように)加味されます」とある。つまりディスプレイの状態にあわせてガンマ値は調整されているわけで、おそらくガンマ「2.2」にあわせて、「0.45」あたりになっていることが伺える。
 残念ながら、この「CMSガイドブック」は最近のアドビシステムズ主催のセミナー等で配布されていないようである。

最終ターゲットに向かってカラーマッチングすべき
 カラーマッチングの方法はいくつもある。いくつもあるが、もっとも取り組みやすいのが、本書で取り上げたアプリケーションでするカラーマッチングだと思う。アプリケーションの機能さえ利用できれば、カラーマッチング用のプリンタを買う必要もない。モニタのプロファイルと、プリンタ用のデバイスプロファイルさえ足せば、カラーマネージメントはできるのである。
 また、カラーマネージメント用のツールも普及が進み、手頃な価格になってきている。十万円程度で、モニタとプリンタのプロファイルを作成できるモナコシステムズの製品などもある。
 本当にカラーマネージメントが普及するためには、こうしたツールが手軽に利用できなければいけないと思うのである。いままでカラーマネージメントの必要性が声高に叫ばれていても、なかなか浸透しなかったのは、カラマネツールが高価だったことにも一因がある。
 また、カラーマネージメントの実際の運用に関するノウハウが公開されてこなかったことも大きいだろう。現実に利用しているユーザーが少ない以上、仕方がないことだが、それもいまでは、関心度が高くなり、公開される情報も格段に増えた。誰でもが利用できるものになりつつあるのである。
 DTPユーザーの多くが、アプリケーションレベルでカラーマネージメントできるようになれば、カラーマッチングは当然のことになるだろう。
 なお、本書のタイトルが「カラーマネージメント」ではなく「カラーマッチング」になっているのは、どのような仕組みを使うにしても、カラーがマッチングしなければ意味がないからである。いくらカラーをマネージメントしてもカラーが合わないのであれば価値はない。重要なのは、何を基準にカラーを合わせていくのかということである。それが鮮明になっていなければ、カラーマネージメントは行き場を失う。
 「カラーマネージメント」という言葉を使うと、Lab値を管理してLab値が合えばいいという理解のされ方になってしまいそうで、言葉にパワーがない。最終ターゲットに向かって、それ以外のデバイスをカラーマッチングしていくという方がより力強い。だから、「カラーマネージメント」という言葉は使わなかったのである。

PDFで安定出力できれば、ACEの利用は進む
 アプリケーションの機能でカラーマネージメントすることがもっともローコストであるかどうかは、人によって議論の余地があるだろう。QuarkXPress 3.3Jを使い続けるのであれば、この方法は無理だからである。PDFにして、Acrobatでするしかない。
 また、アプリケーションでするといっても、バージョンはアップしなければならない。InDesignも使っていないし、Illustratorのバージョンも8.0以前のユーザーにとっては関係のないことかもしれない。
 しかし、これから間違いなく出力フォーマットはPDFに移行する。先頃発表されたAcrobat 6.0 Professionalでは、PDFを分版して出力できるようになっている。PDF内の透明もスポットカラーも分解してPostScriptで書き出せるのである。
 となると、どのようなドキュメントあっても、PDFにしてしまえば、分版はたやすく行えることになる。おそらく出力可能なRIPの許容範囲は広がるだろう。
 それなれば、アプリケーションの違いやバージョンの差は関係なくなる。古いアプリケーションやバージョンが使われている最大の理由は、「出力の安定性・安全性」が果たされているからなのである。
 もしPDFで「出力の安定性・安全性」が確認されれば、新しいアプリケーションを利用することや最新のバージョンに移行することは、出力のハードルではなくなるのではないかと思う。
 DTPユーザーのみなさんには、是非、このACEの機能を知って欲しい。これがわかれば、どのようなカラーマネージメントの仕組みであっても、応用がきくはずである。本書がその一助になれば幸いである。(上高地仁)

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