■別名で保存してPDFを作る
IllustratorでPDFを作る場合は、基本的にPostScriptファイルを作成してDistillerで作るほうが安全です。
しかし、Illustrator 8.0からは、保存時のオプションでPDFを作成することが できます。PDFの作成自体はIllustrator
7.0Jから可能でしたが、7.0Jでは日本語などのダブルバイトフォントには対応しておらず、実質的には8.0からと考えていいでしょう。
Illustrator 8.0の機能でPDFを作るのはたいへん簡単です。ケースバイケースで、この方法を使うのもいいかもしれません。
ただしIllustrator 8.0のPDF作成機能では、日本語のCIDフォントの埋め込みはできません。しかし欧文フォントの埋め込みや画像の圧縮、カラー変換の指定を行なうことができます。また互換性で[Acrobat
3.0]と[Acrobat 4.0]を選択できますが、グラデーションメッシュを使っていて互換性で[Acrobat 4.0]指定すると、グラデーションメッシュがなくなります。グラデーションメッシュを使う場合は、[Acrobat
3.0]で保存するか、PostScriptファイルを書き出します。 |
●ファイルメニューで[別名で保存]して[Acrobat PDF]で保存 |
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●Illustrator 8.0保存時のPDF形式の[一般] |
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●Illustrator 8.0保存時のPDF形式の[圧縮] |
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■別名保存時の注意点
Illustrator 8.0の別名で保存したPDFは、まずフォントのエンコーディングがPDF用になっておらず、元のエンコーディングのままなります。Distillerであれば、エンコードが「Identity-H」になりますが、別名保存したIllustrator
8.0のPDFは「90pv-RKSJ-H」となっています。「90pv-RKSJ-H」はTrueTypeフォントのエンコーディングなので、本来「83pv-RKSJ-H」となるはずのPostScriptフォントは外字エリアで文字が差し変わってしまうことになります。
●Illustrator 8.0のサンプルドキュメント |
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※各々に外字エリアの文字を使用し、CIDフォントでは字体の切り換えを行なった。
●フォントを削除してDistillerを開くとMakeCIDが起動する |
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●ファイルメニューのフォントを開くと「90pv-RKSJ-H」になっている |
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※別名保存で「Acrobat PDF」を作成すると、エンコードが差し変わる。そのためローカルフォントを使用しても外字領域の表示は「文字化け」する。 |
採用されるエンコーディングが変わるため、外字領域の文字は化けてしまうことになります。CIDフォントはMacintosh環境上では「83pv-RKSJ-H」なので、区点コード「13.01」の「○囲みの1」は、PDFにするとTrueTypeの「(月)」に差し変わってしまいます。OCFフォントは、正しく表示されていますが、PostScriptプリンタで印刷したとき、プリンタフォントを使用しても外字は「(月)」に差し変わってしまいます。またTrueTypeフォントも区点コード「09.01」の「○囲みの1」は、文字化けこそしませんが、別の書体に置き換わっています(Distillerを通してもTrueTypeの外字領域の字形は正しくならなりません)。
またIllustratorの字体切り換えした文字は、この方法では反映されず元に戻ってしまいます。これはエンコーディングがCIDコードを示していないからで、TrueTypeの文字コードで字形をアクセスしているからです。
■埋め込みはTouchUpテキストツールで
フォントの埋め込みはTouchUpツールでテキストを選択し、ツールメニューのTouchUpで[テキストの属性]で[埋め込み]をチェックします。それでもう一度PDFを別名保存すると、埋め込みが完了します。
埋め込めるフォントはTrueTypeとCIDの両方が可能です。しかもTrueTypeは文字送りが変わることはありません。また表示が正しくならない外字領域の文字も、埋め込みと正しい表示に戻ります(Distillerで作成した場合も、埋め込むと正しい表示になります)。
●TouchUpツールの[テキストの属性]で埋め込む |
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●埋め込んで別名保存したPDFの表示 |
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※TrueTypeもCIDも埋め込むと外字領域の表示は正しくなるが、字体切り換えの文字は切り替わらない。 |
●埋め込んだPDFのフォント情報 |
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※埋め込むとPostScript CIDはエンコードが「83pv-RKSJ-H」に戻っている。 |
Illustrator 8.0でPDFを作成するときは、日本語のフォントはTrueTypeフォントPostScript CIDを使い、基本的には埋め込むようにしましょう。また字体切り換えは効かないので注意が必要です。 |