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シーボルトの展示会場が閑散としているのをうけてか、1階にあったセルフサービスの軽食屋もほとんど客はいないようだった。コーヒーなどをのみながら、「それで...」と寺田さんは話はじめた。
判型は「QuarkXPressによる 標準 DTP入門講座 基礎編」と同じであることはわかっていた。コンピュータの一般的なマニュアルサイズに準拠した182mm×230mmというB5の変形であった。そして何と300ページくらいにしたいという。見開き程度で一つのトピックとすると、100〜150の見出しが必要となる。
ページ数が多いほうが、本屋で棚に入れられたときにその分厚い分だけ目立つ言うことがあり、最初から最後まで一気に読ませるという本というより、リファレンスを付けて折々に必要とするトピックを開いて使うというものにしたいということだった。そうなるとやっぱり300ページ程度は欲しいらしい。
もちろんこのあたりのことは、今までのメールのやり取りである程度聞いていたことだ。とはいえ300ページという具体的な数字を突き付けられると、「こりゃ結構性根をいれてせんといかんなあ」と再確認することとなった。
もちろんお金の話もした。お金の話はやはりフェイスツウフェイスでケリを付けるべきことで、メールでするのはチト辛い。
以前メールである依頼がきた。あるところのでDTPシステムが立ち上がるのでメールでサポートをして欲しいという内容だった。Q&Aで書いてあるような感じでメールでサポートして欲しいようだった。
Q&Aというのは実はたいへんなんだな。というのは、質問者自体が解決するために何を伝えればいいのかわかってないことが多いので、質問者がメールに書いてきていないことを想像したうえで、場合によって回答した結果を先回りして書いていたりする。問題点がはっきりしていたら、もうその問題は8割方解決したようなものであって、あとは具体的な手順を見つければいいだけなのだ。だからメールでチョコチョコとトラブルを書いてきてもらっても、簡単に答えられないことが多い。結局どこに問題のポイントがあるのかを聞き出すために、もう一度メールを送ったりしなくてはならないので、メールだけで解決するというのは大変難しい。
たとえば知り合いのところでトラブルがあって、電話でなんだかんだいってくるのを聞いていても何をいっているのかまったく理解できないことがよくある。しかしマシンの前で少しシステムを触ると、いとも簡単に直ってしまうことがある。もちろん質問するほうと、回答するほうが同じようなレベルであれば、話は通じやすいが、質問をするというのは、たいていレベルが違っている人に質問を投げかけるのであって、そういうときは、かみ砕いて説明してもらうためにかみ砕いた質問を逆にしたうえで、もう一度かみ砕いて説明しなければならないのだ。
そういうことを考えると、「サポートフィーというよりコンサルタントフィーぐらいでないと受けれんな」と思ったので、どのくらい予算があるのかと訊ねたら、あまりに安かったので、発作的に「主婦の内職ぐらいのお金ではできないよ」なとど書いて送ってしまった。先方は私が激怒していると受け取ったようで、そういう主旨のメールが折り返しやってきた。なむさん、そういう意味ではなかったのだが、と私は思った。そしてつくづく金銭の絡む問題はメールでは難しいと。メールではというより、メールだけではちょっとしたことが誤解を招いたり、勘違いしたりして思わぬ方向に感情がこじれていったりするのだ。そういうサポートをして欲しいというオファーそのものは嬉しかったのだが、やっぱり多少感情的になっていたことは否めない。やんわりとお断りすることができなかったのだ。しかし、きっとよく知ったひとであれば、一言二言で終わった話だろう。
ということで話はそれたが、お金の話はここで終わったのであった。
最後の問題は「制作までやって欲しい」というオファーだった。これには頭をかかえてしまった。私の回りにはそういうことが簡単にできるエキスパートがいるだろうから、そこでレイアウトまでを終わったものを見たいという。
正直言うと原稿書きだけにしたいと思っていたのであった。原稿を書いて渡すだけで終わりにしたいと考えていたのだが、先制パンチを食らってしまったのであった。
確かに原稿を書いた本人がレイアウトまでする、あるいはレイアウトまでをマネージメントするというのは、理にかなったものだった。DTPではそれができるのが大きな特徴であって、しかも今回のような図版の多いものは文字原稿だけでは、文意を読み取ることができず、レイアウトしたものがなければ、校正は実質上できないのであった。
今まではどうしていたのかと聞くと、今までもほとんどそのような形態で進めているという。もっともレイアウトがあらかたできあがってから、ベースのデザインを変えるようなことになると大変だとは言うものの、そういうことがなければ、確実にスピーティにしかも作者の意図を反映させることができる方法なのであった。 |
このコンテンツは1997年9月18日に書かれたものです。 |
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