1-1 カラー設定ファイルを共通化しなければカラーの管理はできない
モニタによって表示カラーが変わるRGB
Photoshopを扱う上で、もしくはカラーマネージメントしていくとき、是非とも知っておきたいことは、Photoshop
6.0以降のカラー設定の仕組みです。
5.5以前のカラー設定が複数のダイアログで行っていたのに対して、6.0以降は一つのダイアログにまとめて設定するようになりました。その意味するところを理解すれば、6.0以降のカラー設定は使いやすいといえますが、5.5までの設定になじんでいると、いささかとまどいを覚えるかもしれません。
といっても、4.0以前と5.0もしくは5.5のカラー設定は大きく変貌していて、5.0もしくは5.5のカラー設定と6.0のカラー設定は基本的には大きな違いはありません。6.0以降のカラー設定は、5.0もしくは5.5のカラー設定に作業用カラースペースという概念を持ち込んで拡張し、カラー設定ファイルを作ることで、より使いやすくしたものといえます。
Photoshop 4.0以前のものは、モニタの設定によって表示色がかわるというデバイス依存体質でした。つまり、モニタ設定が変わると、モニタ表示色も変わり、同じデータをCMYK変換しても同じ色には変換されないのです。そのためカラーマネージメントするという点からいうと、かなり無理があったのです。
モニタ表示に依存しないためには基準RGBカラーが必要だ
5.0以降は、すべて画像がモニタの設定に依存しないような設定が可能になりました。というよりは、モニタの設定が異なっても、同じRGB画像を同じようにCMYK変換するには、共通のRGBカラースペースを使えばいいことになったのです。
もちろん、すべてのモニタで一つのRGBモニタ設定を適用すると、モニタによって実際に表示されるカラーが異なってしまうことになります。モニタと一口に言っても、CRTと液晶の違いだけでなく、おなじCRTでもフラットスクエア管とアパーチャーグリル管といった構造上の違いもありますし、液晶でもいくつかの方式の違いがあります。機種が異なれば同じ方式でも、電子ビームを照射するときの回路が異なります。ですから、機種によって同じRGBカラーを表現しても、モニタ上に再現されるカラーは違っているわけです。
また、たとえば、古ぼけたテレビの色が、経時変化によって電子ビームのバランスが崩れ、とんでもないものになっているように、モニタのRGBの再現は同じ機種であっても、モニタによってすべて異なっていると考えてもいいものなのです。同じRGBのカラースペースを使いつつも、モニタの機種の違いを反映させるためにはどうすればいいでしょうか。モニタのRGBと基準となるRGBの違いをカラーマッチングしてやればいいのです。
そのためには、モニタの表示色をRGBカラーではなく、もっと汎用的なカラースペースに置き換えるのです。それがLab(L*a*b*=「エルスター・エースター・ビースター」を略して、「エルエービー」といい、さらに略して「ラブ」という)というカラースペースです。Labは理論的にすべてのカラーを扱えるカラーなので、このLab値を固定しておくと、見た目のカラーを維持したまま、カラーを扱うことができます。
つまり、画像の持つオリジナルのカラーを維持したまま、モニタの表示は、モニタのプロファイルを使ってカラーマッチングするのです。Photoshop
5.0の[RGB設定]に「モニタ補正を行って表示」というチェックボックスがありますが、これをチェックすると、モニタのプロファイルを使ってLab値で、つまりオリジナルのRGBカラーを変換して表示するのです。この場合、画像のRGB値は基準となるRGB値のまま扱われますが、モニタに表示しているRGBはオリジナルのRGB値とは異なっています。
しかし、オリジナルのRGB値はモニタの機種が変わっても、同じRGB値として扱うことができますから、どのモニタでCMYK変換しても、同じCMYK値を得ることができます。
こうしてPhotoshopは、基準のRGBカラーを設定することで、モニタというデバイスの制限から脱却したのです。
設定ファイルは統一して「プリプレス用─日本」がオススメ
カラーをマネージメントするためには、RGBカラーと同時にCMYKカラーの基準となるカラーを決め、そしてカラー変換するときの扱い方を統一しておくことが必要になります。それができないと、カラー画像の扱いは、そのPhotoshopの設定に依存することになります。DTPでは一つのデータを複数のマシンを使いリレーして作業することが一般的ですから、同じ処理をしてもマシンが異なったとき作業結果が変わってしまうことは避けなければなりません。
カラーに関わるいくつもの設定を一つのダイアログで指定できるようにし、標準的なカラー設定の設定を用意したものが「設定ファイル」なのです。5.0もしくは5.5においても、基準となるRGBとCMYKのカラースペースはユーザーによって個別に設定できますが、共通のカラー環境を設定しにくいという点がありました。そのため、6.0以降ではそれらをセットした設定ファイルが用意されたのです。設定ファイルを共通化することで、カラーに関するすべての設定を共通化できるのです。
Photoshop 6.0以降を使うとき、カラー設定とPhotoshopのカラーマネージメントの仕組みがわからないと、「最低限のカラーマネージメント」という設定ファイルを選択してしまうことが少なくありません。しかし、これを選択してもカラーマネージメントしないわけではなく、基準のRGBカラー、つまり作業用RGBには、モニタのRGBが、そしてCMYKではアメリカでの印刷の基準である「U.S.Web
Coated(SWOP) v2」が選択されるだけです。これは概ねPhotoshop 4.0以前と同じように、モニタのRGBで画像を表示するだけであって、一台のみでPhotoshopを使うのであれば、これでもいいのですが、他のマシンのPhotoshopや別のアプリケーションでも同じカラーで表示させるためには、全くといっていいほど不向きな設定なのです。
RGBの作業用スペースについて、汎用のRGB作業用スペースを経由して利用していないもので、Photoshop 4.0以前と同じ仕組みのため「最小限」と表示されているに過ぎないのです。
日本でDTPするときに推奨される設定ファイルは「プリプレス用─日本」です。なぜ、「プリプレス用─日本」なのかということを理解するためには、カラー設定ダイアログの意味を知る必要があります。まず、作業用スペースが果たす役割を理解しましょう。「プリプレス用─日本」を選択しても、それ以外のカラー設定ファイルを選択しても、気後れすることなくPhotoshopを扱うことができるのです。
※現在日本のDTPで推奨されているカラー設定ファイルは「日本-Japan Color」である。これは枚葉のオフセット印刷でのスタンダードとして広く認知されている。
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