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鹿野 宏 著/A5/112P/2004年01月23日初版発行/インクナブラ
刊行 |
プリントアウト用やクリーンブラウズ用PDFが収録されたCD付 |
定価:5,040円(内税:240円) |
一般販売価格:5,040円 DTP-S倶楽部会員価格:4,200円 |
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Illustrator CSの新機能ガイダンスを書いたときに、Photoshop CSの新機能ガイダンスも発行しようと思ったが、自分で書くには荷が重すぎた。Photoshopは知らないことが多いので、よしんば書けても十分な説明はできないし、読者を納得させる自信はないからである。 そこで、「餅は餅や」ということで、有限会社ハンディの鹿野宏さんにお願いすることにした。鹿野さんはカメラマンで、東京電塾の運営委員の一人でもある。「カノッサン」の愛称でも知られている。電塾のサイトはに、鹿野さんが書いた新製品のレポートが頻繁にアップされてるので、ご存じの方も多いだろう。 「ACEでするローコストカラーマッチング実践講座」の書籍の件で、鹿野さんの事務所にお伺いしたことがあり、それ以来おつき合いさせていただいている。最初に事務所に訪問したときに、大きな揺れを感じたことはいまでも覚えている。東京は地震が少なくないが、このときは長い揺れが続き、これが昨年の仙台の地震であった。
Photoshopについては実は私もよくわからないところが多い。使っていない機能が多いというより、使い方も知らない機能が多いというのが本当のところだ。DTPで使う機能は限られたものが多く、すべての機能を使いこなす必要はないからだ。したがつて、バージョンアップされて追加された機能でも、本当は使えば便利な機能であるにもかかわらず、知らずにも使っていないものも多いのである。 DTPで使われているPhotoshopのバージョンはどれがもっとも多いのかというと、なんともいえないが、おそらく、5.xから6.0以降への移行期ではないと考えられる。いまだに4.0を使っているユーザーもいるだろう。スタンドアローンで使うのであれば、4.0でも使えなくはないからだ。しかし、4.0以前はCMYKカラーがモニタ設定の影響を受けるので、カラーマネージメントを行うのであれば使うべきではない。 5.xを使っている場合は、6.0以降にシフトしても実際にはほとんど問題がない。内部のカラーの仕組みはほとんど同じだからである。RGBとCMYKの設定を同期させておけば、5.xと6.0以降は互換性があるのだ。6.0以降を使うには、LabをPCSとして採用した作業用スペースが理解できれば、何一つこわくない。 6.0以降のバージョンであれば、7.0でも、CSにバージョンをアップすることはほとんど問題がないはずである。そろそろ印刷機の作業スペースが大きな話題になっており、Adobe Color Engineを使用したカラー設定は必須のものになっているといっても言い過ぎではない。
今回のCSバージョンの新機能は、検索や自動処理の機能を備えた「ファイルブラウザ」、16ビットに対応しデジカメに最適化された「フォトグラファー向け機能」、自動で別の画像のカラーを適用するなどの「クリエイティブプロ向けの機能」、非正方形のピクセルをサポートした「フィルム、ビデオ向け機能」、ImageReady関係の「Web向けの機能」がある。 鹿野さんに整理していただいた原稿を読んでいると、新機能のメインは「デジカメに最適化されたバージョンだな」と思った。多くの新機能があるにしても、プロ用のデジカメデータのハンドリングを意識しているのは間違いない。 Camera Rawのサポートは、デジカメそのものに対応したデータである。Photoshop CSを知る前は、Camera Rawなどという言葉は知らなかった。Rawというのは「生の」という意味だから、デジカメで補正する前の、いわば「ネガ」のデータなのである。もちろん、これらのデータが取り出せる機種は限られているし、また、Photoshop CSが対応している機種も限られているが、Camera Rawのデータであれば、デジカメの補正回路で補正する前のデータを使ってPhotoshopで処理できることになる。そうなると、デジカメの違いはレンズの違いくらいになっているわけである。もちろん、どのようなときでもCamera Rawのデータが必要とは限らないが、プロのカメラマンであれば、生のデータが欲しい場合もあるに違いない。 また、カラーの適用では、色調の異なる画像のカラーを合わせることができる。ソース画像を指定すると、その色調に自動的に合わせてくれる機能なのだが、これなども、同じシチュエーションで撮影したショットでも、デジカメの機種が異なるとカラーが違ってしまった場合に便利である。機種が違うのに、同じ機種で撮影したように仕上がるのである。
デジカメのデータをハンドリングするために強化されたともいえるものにファイルブラウザがある。ファイルブラウザは7.0にもあるが、画像のサムネールがアイコンで見るよりもわかりやすい程度で、ブラウザ内の画像のディテールはプレビューするか画像を開かないとわからなかった。 しかし、CSのファイルブラウザのサムネール画像は、カスタマイズして大きく表示できるだけでなく、さまざまなメニューが追加されて、実用性が格段に高まった。 とりわけ便利なのは、自動処理機能だろう。自動処理には、ファイルブラウザで選択した画像をPDF形式のスライドショーとして書き出す機能や、HTML形式で書き出すWebフォトギャラリー、複数の画像を1ページに配置するコンタクトシート、1つの画像を1ページに複数自由にレイアウトできるピクチャパッケージなとがある。 しかし、なんといって便利なのは、ファイルブラウザから画像を選択してそのまま場バッチ処理でアクションを指定できることだろう。画像をファイルブラウザで確認して、必要に応じてPhotoshopで加工し、必要な画像のみを選択してバッチ処理ができるのである。いままで、バッチ処理用のフォルダまとめていた作業が不要になり、すべてファイルブラウザで完結するのである。 いままで、レイアウトで利用する画像は、Mac OS Xのプレビューで開いて確認していた。プレビューだと複数の画像をドラッグすると、サムネールがパネルに表示されるので、順番に見ていくことができるからである。それ以前は、Photoshopですべての画像を開いて確認していたが、プレビューを使うだけでもけっこう便利になったのである。 しかし、Photoshop CSのファイルブラウザは、プレビューを不要にした。ファイルブラウザがあれば、レイアウトしようとするすべての画像を適当なサイズで一覧でき、必要に応じて処理できるのである。
デジカメを使わないDTPユーザーにとって、Photoshop CSのメリットは何かというと、やはりこのファイルサブラヴの尽きるのではないかと思う。ファイルブラウザを使うためにバージョンアップフィーを払う価値はありそうである。
そのためには、Mac OS X環境に移行し、メモリを多く搭載したマシンに乗り換え、さらに表示領域の大きいモニタが必要なる。そのあたりのバランスは皆さんで秤にかけて貰うしかないが、すでにMac
OS X環境(Windowsは2000もくしはXP)でG4やG5のマシンを使っているのであれば、Photoshop CSはたいへん魅力的なバージョンである。(上高地
仁) |
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