日本で最大の印刷会社は言わずと知れた大日本印刷株式会社です。売上高は連結で1兆5千8百億円を超える大企業です。売り上げの約半分は印刷関係ですが、残りは住宅関係資材や液晶のカラーフィルターなどの売り上げです。
印刷業がデジタル化した頃、大日本印刷のスローガンは
総合情報加工業
でした。「総合」という言葉通り、さまざまなコンテンツを加工してパッケージに仕上げるという意味です。意味するところは印刷だけに関わらず、マルチユースでの加工に対応していくことでした。当時は情報を加工したものを売ることが大日本印刷の役目だったのです。
最近の大日本印刷のスローガンをご存じですか? 今年のスローガンは
ハイブリッド出版
といいます。昔は加工業だったのですが、いつの間にか「出版業」に鞍替えしているのです。「総合情報加工業」を唱えていた頃は、クライアントの情報を加工して製品にして納品すれば十分だったのですが、それがだんだん難しくなっていき、加工業は出版業に変貌していったのです。
加工業から一気に出版業になったわけではありません。その間に「総合情報加工業」は「ワンソース・マルチメディア」となり、「ユニファイド・パブリッシング」となり、「クロスメディア」というスローガンを経て「ハイブリッド出版」になったのです。「ユニファイド」は統合されたという意味で、複数のメディアを協調させるという意味です。
この流れを見ていくと、大日本印刷はそれまでの黒子的な加工業から川上のコンテンツに軸足を移動させていることがよくわかります。逆に言うと、いくら総合的に加工業のポジションを守っても利益が出にくくなったということではないでしょうか。マルチメディア、マルチユースするにしても、受け身の立場では思うようなビジネスができないということだと言えそうです。
コンテンツをユニファイドして展開するのであれば、加工業ではなく、
コンテンツ・プロバイダー、あるいはコンテンツ・ホルダーにまで遡ってビジネスを展開
するしかありません。コンテンツまで手がけるのは、加工業だけでは利益を生み出すのが難しくなっているということの証差ではないでしょうか。
ここのところ、大日本印刷は出版社や書店を買収したり出資したりして、川上のコンテンツに手を伸ばしています。川下の書店にも力を入れて、アップルやアマゾンのように垂直統合型のビジネスを目指していると考えられます。しかし垂直統合するには、売れるコンテンツを集めることがもっとも重要です。
印刷業も多様化・専門化が進んでいます。総合的な印刷会社はコストダウンのために垂直的な機能を社内に合わせ持つことが当たり前になってきました。かつて都心部では印刷会社の多くが工程毎に分化していましたが、デジタル化以降、従来の写植や製版工程はDTPに取り込まれ、デザイン・レイアウトまでも含めた垂直統合型の印刷会社が増えてきました。地方の印刷会社はもともと垂直統合型でしたが、都心部の印刷会社も同じように、垂直工程を統合するようになりました。
商業印刷での川上は、企画・制作の工程です。ここを押さえると、あとの工程は芋ずる式に受注できることになります。
川上がキーポイントなのは昔も今も同じ
ですが、昔と異なるのは企画が決まってからの展開が早いということと、展開するメディア、マルチユース先が多様化していることでしょう。
たとえば商品のプロモーション企画が決まったら、印刷会社は複数の印刷だけでなくWebや携帯サイトに即座に対応しなければなりません。印刷しない場合も、最適メディアの選択も必要になるでしょう。複数のメディアに即座に対応することが必要になります。
印刷や印刷に関係するコンテンツ(企画)が決まったら、
すぐさま多くのメディアやファイル形式に展開できるノウハウ
は、大日本印刷でなくてもこれからの印刷会社に必要な機能ではないでしょうか。
ビジネスは成長している分野で取り組むのが一番です。マーケットが成長しているときは、売り上げを大きくし易いのです。これからデジタル化でマーケットがもっもと大きく成長するのは電子書籍の分野です。この分野ではうまくすれば、手間をかけずにビジネスを大きく展開できる可能性があります。
電子書籍ビジネスの川上とは、書籍にするコンテンツです。コンテンツを支配するものが勝ち組になれます。既存のコンテンツを電子書籍化する場合、はっきり言って出版社の方が有利でしょう。しかし、将来を見渡したとき、
5年先10年先に売れているコンテンツ
が既存の出版社の手元にあるとは限りません。
つまり将来売れるコンテンツは、まだ誰の手に握られていません。今からでもコンテンツホルダーになる道をとれば、出版社でなくとも、電子書籍ビジネスに十分に参入することができます。アメリカではアマゾンの自費出版が大流行ですが、日本でも同じように自費出版がはやるようになれば、自費出版のマーケットは大きくなることは間違いありません。
アメリカでは電子書籍の自費出版はアマゾンのシェアが圧倒的ですが、日本では複数のコンテンツ・プロバイダーが乱立しそうです。コンテンツを持っていてもそれだけでは売ることはできません。
自費出版であっても、複数の配信プラットフォームに電子書籍を配信するノウハウが必要
になります。つまり、コンテンツを展開するワークフローが求められます。日本での電子書籍は今までにない形態の出版社が活躍できる余地が十分にあるのです。
『コンテンツ・ワークフロー実践会』は、出版だけでなく商業印刷も含めて印刷会社が必要とするのコンテンツの展開方法を中心に情報を提供いたします。それだけでなく、ワークフローを展開したときのマネタイズにも関心を持って運営していきます。マネタイズができなければビジネスは完結しないからです。新しいメディア、今までにないファイル形式や使用方法など、セミナーを通じてお届けします。
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