昨年、Appleが販売したiPhoneとiPadの販売台数をご存じですか。Appleの決算発表のリリースを拾って合計すると、2011年度は
iPhone 9,310万台
iPad 4,049万台
となっています(Appleの決算は9月末なのでAppleの2011年度の販売数ではありません)。ひとつの企業の単一OSでのコンピュータ販売数としては比類なきセールスです。とくに、2011年のクリスマスシーズンを含む3ヶ月では、iPhoneが3704万台、iPadは1543万台をカウントしています。
*2009年以降のAppleの売り上げとiPhoneとiPad、Macintoshの販売台数。第1四半期だけを比較しても2009年と2011年では4.5倍に急速に拡大しています。
一般的に日本でのiOSのシェアは全世界の6%くらいといわれています。そうなると、日本だけでも昨年1年間で550万台くらい、iPadも240万台くらいが売れたことになります。2012年度もRetinaに対応した新しいiPadの登場でiPadのセールスは昨年を凌駕することは間違いありません。
最新はWebサイトでもiPadのRetinaに対応する動きが増えきました。iPadのSafariでWebサイトを見たとき、Retinaに対応した画像を表示させる必要が生まれてきたからです。しかしiPadで情報を提供する場合、Webサイトよりアプリ化する方が確実にユーザーにメッセージやコンテンツは届きます。企業や個人がWebサイトやブログを持つように、これからはメッセージを伝えるためにはiOSアプリは不可欠になりそうです。
とはいえiOSアプリのリリースはハードルが決して低いとはいえません。ブログを書くようにはいきません。アプリを作成するより、App Storeに申請する仕組みを理解する方が困難かもしれません。しかしそれでも、これからの普及台数を睨むとiOSは決して無視することはできないコミュニケーションツールではないでしょうか。
iPhoneやiPadのiOSアプリを作成するには、Xcodeというプログラミングツールを使います。XcodeはAppleがApp Storeで無料で提供しています。Mac OS X 10.7以前ではXcodeは2つのバーションが無償でダウンロードできました。
Xcode 3.2x
Xcode 4
です。ところが、現在は最新版のみしか無料でダウンロードすることができません。最新版は「Xcode 4.3.2」でMacintosh上のApp Storeからのみのダウンロードとなります。しかも、対応OSはこれも最新版の10.7.3のみとなっています。
OSを10.7にせず、10.6のままXcodeを使うには、iOS Developer Programに登録します。年間8,400円(2012年現在)を支払えば、Snow Leopard用のXcode 4.2をダウンロードできます。そうすればMac OS X 10.7ダウンロードフィーの2,600円は節約できます。
これからiOSアプリを作成したい考えたとき、まず最初に無料のXcodeをダウンロードすることになりますが、その場合、Mac OS X環境も最新版にするしかありません。Mac OS X 10.7にするには、まずCore 2 Duo以降のMacintoshに10.6.6以降をインストールし、App Storeから10.7を有料で買うしかありません。無料のXcodeだけを使うためには、有料の10.7が必要です。つまり、Xcodeは無料ではなく有料のプログラミングツールになったといっても言い過ぎではないでしょう。
こんにちは、インクナブラの上高地仁です。このたび「Xcode 4でiOSアプリの設定と申請を最短距離でする方法」という本を書きました。Xcode 4でiO Sアプリを実機インストールしたりApp Storeに申請する上では必要十分な解説を用意しました。Xcode 4ユーザーの方は是非、この機会に手元に置いて下さい。安心してXcode 4をお使いいただけます。
この本は私、上高地仁とシナジーソフトウェア の岡野克彦さんとの共著ということになっています。実際には私がすべて書いていますが、ノウハウ自体は岡野さんのものです。それで共著にしました。岡野さんから聞いたものを私が実践し、それをまとめたものが本書です。
電子書籍元年といわれたときに、InDesignからEPUBを作成する方法をテーマに書籍を書いてセミナーをしました。日本で電子書籍の大きな気運が生まれたとき、もっとも注目されたのが「EPUB」というフォーマットだったからです。中身はXHTML+CSSで、要するにWebサイトの仕組みを電子書籍にしたものでした。InDesignはCS3からEPUB書き出し機能が備わったのでそれをテーマにしたのです。
そのセミナーを何回か開催した後、実際の電子書籍マーケットを見ていくと、EPUBは当分無理という感想を抱くようなりました。EPUBを作成してもDRMを付けて販売してくれるマーケットがなかったからです。ガラケーのコミックを除けば売れている電子書籍はiPhoneアプリ形式のものだけでした。10万ダウンロードを超える書籍が現れて、もう電子書籍はiPhoneアプリしかないと重いました。そして
iPhoneアプリ作成ツールを作る
とほぞを固めたのです。
といっても私はiPhoneアプリのプログラミングは一切できません。またいまから覚えたいとも思いませんでした。そこでiPhoneアプリ作成ツールを依頼したのが、岡野さんでした。当時、岡野さんも同じようなツールの作成を目論んでいました。ページの数だけ画像を配置してiPhoneアプリを作成するツールでした。ただし、同じような仕組みのツールは他にもありました。
そこで私が提案したのが、ページ本体をPDFにし、そのPDFを差し替えるだけでiPhoneの電子書籍が作成できるツールでした。画像の代わりにPDFにするのです。ページ物をPDFであれば、差し替えるだけでアプリが完成できます。PDFであれば、印刷やDTP関係のユーザーでも使えるのではないかと思いSakuttoBookプロジェクトが始まったのです。
まずSakuttoBookでインクナブラのコンテンツをアプリ化してApp Storeに申請しました。当時は Xcode 3.2.5を使っていましたが、Xcode 3アプリのメニューが日本語化されていましたが、申請するのでの手順の煩雑は知恵熱になりそうでした。アプリの作成はXcodeでしても、作成したアプリを申請するには
iOS Provisioning Portalの設定とファイルダウンロード
Xcodeでプロジェクトファイル配信用設定
iTunes Connectでの入力とファイルアップロード
Application Loaderでのアプリファイルアップロード
という手順に分けることができます。しかしこの手順は、はじめて取り組むと迷宮に迷い込んだように立ち位置を見失いそうになります。
iOS Provisioning Portalのなかに、
iTunes ConnectのManage Your Applicationsを追加しろ
と思わず叫びたくなります。いまダウンロードしているファイルは何のためなのかということがわからなくなるからです。要するに「慣れ」の問題なのですが、頭の中に記憶されシナプスがすぐに接続されるようになるまでは大変でした。
申請の仕組みと方法を岡野さんに手取り足取り教えていただき、SakuttoBookのマニュアルを作成し、実機インストールとアプリ申請のマニュアルも別途作成しました。実機インストールとアプリ申請のマニュアルは、iPhoneアプリ作成ツールには不可欠だったからです。
当時、Appleとの秘密保持の規約でApp Storeでの手順を公開してはいけないという噂が先行していました。そのため実機インストールやアプリ申請のマニュアルはWebを探してもあまり見つけることができませんでした。しかしそのころにはそういう縛りは一切なくなっていたのです。おかげでいまでも、App Store公開の方法について解説するWebページはそれほど多くはありません。
Mac OS X 10.7がリリースされた頃から、Xcode 3.2.6はiOS Dev Centerから無料ではダウンロードできなくなっていきます。iOS 5がリリースされると、AppleはiOS 5に対応したXcode 4にシフトし、Xcodeの古いバージョンのダウンロードは無料ではできないようにしたのです。Xcodeをお試しに使うには、Xcode 4を使うしかなくなりました。
しかし、Xcode 4は使いにくいものでした。3.2.xから移行するには大きな壁がありました。その壁は
メニューが日本語化されていない
構成の追加方法が変更された
ビルドの設定も変更された
などです。Xcode 4では3.2.xと同じメニューではアプリをビルドできません。メニューの構成自体が違っている上、すべて英語なので、初心者にはとりつく島がありません。
SakuttoBookもXcode 4に対応したバージョンはリリースしたのですが、実機インストールとアプリ申請のマニュアルはXcode 4に対応したものは作成していませんでした。そこで、Xcode 4での実機インストールとApp Store申請の方法をまとめることにしました。それが「Xcode 4でiOSアプリの設定と申請を最短距離でする方法」です。
もともとSakuttoBookユーザーの方に配布する予定でしたが、iOSアプリを作成される方にもご覧いただきたいと思い、「Xcode 4でiOSアプリの設定と申請を最短距離でする方法」だけをお届けすることにしました。ただし「Xcode 4でiOSアプリの設定と申請を最短距離でする方法」だけではアプリを実際に作成することができません。そこでSakuttoBookの機能限定版
SakuttoBook Lite版
をバンドルすることにしました。「SakuttoBook Lite版」はSakuttoBookの機能限定版ですが、このLite版はサンプル版ではなく、Lite版でApp Storeに申請していただたくことも可能です。iOSアプリを作成するツールとしてはもっとも廉価なものの1つでしょう。「Xcode 4でiOSアプリの設定と申請を最短距離でする方法」と「SakuttoBook Lite版」があれば、それだけでApp Storeに電子書籍アプリを申請することができます。
SakuttoBook Lite版の使い方動画
VIDEO
SakuttoBookはもともとiPhoneの電子書籍を作成するツールとして開発しました。しかし中身は電子書籍でなくてもかまいません。PDFであれば何でもかまいません。ただしあまり信頼の置けない方法でPDFを作成すると、アプリが落ちやすくなります。
アプリを販促ツールに使う試みはこれからますます増えていきます。役に立つアプリであれば、Appleの規約に違反しなければリジェクトされることはありません。販売用のアプリが駄目であれば、マクドナルドのクーポンアプリも不可ということになります。
iPhoneについてはいまのところsoftbankとauが販売合戦を行い、両者とも携帯デバイスの純増数を増やしています。Androidは個人情報の流出が相次ぎセキュリティが甘いこともあり、iPhoneの比率は当分減ることはありません。下手をすると、2012年中に日本で使われている携帯デバイスのうち一千万台はiPhoneになるかもしれません。極めて大きなマーケットがそこにあります。
iOSアプリで見込客を集めるには、新しくプログラムするのは難しいでしょう。ブログラマにプログラミングを依頼すると、それなりに費用がかかります。数十万円から数百万円はかかります。アプリを開発すると人件費が発生しますので、費用が発生するのは当然です。しかしSakuttoBookのようなツールを使えば、費用は社内の人件費だけです。新しく外部費用は発生しません。SakuttoBookやこの書籍とiOS Developer Programの年会費だけです。
あとは見込客にアプリをダウンロードしていただく方法を考えます。ダウンロードされたアプリはアップデートすると、アップデート内容はたいていユーザーに伝達されます。アップデートを重ねていけばいいのです。
ついでにいっておくと、審査の通過したアプリはアップデート時にアプリ名を全く別のものに変更することができます。ユーザーの関心のある無料アプリでダウンロードを稼ぎ、そこから販促用のアプリに差し替えていくことも可能です。iOSの3G回線からダウンロードが50MBまでに緩和されたので、より多くのコンテンツを配信できるようになっています。
実機インストールや申請方法は、検索すればWebサイトにいくつも方法が掲載されています。しかし、iOS Provisioning Portalで認証ファイルを作成し、実機用のプロビジョニングプロファイルを作成して実機にダウンロード、そしてApp Storeでアプリ毎に配信用のプロビジョニングプロファイルを作成して、そのプロファイルで配信用にアプリを作成(ビルド)してiTunes ConnectのManage Your Applicationsにアプリをアップロードする方法を分かり易く書いたものはありません。
iOSアプリのプログラミングは決して誰にでもできるわけではありません。しかしSakuttoBookのようなXcodeのプロジェクトファイルを少しカスタマイズしてiOSアプリを作成するようにツールはこれからもますます増えていくでしょう。そこで、実機インストールとアプリ申請までの方法をXcodeの最新版で行う方法をできるだけ分かり易く解説したのです。
iOSアプリマーケット、とくにiPadをターゲットにした販売宣伝はこれからでしょう。新製品やサービスの告知にはiOSアプリはもってこいです。アプリをアップデートすると、それは必ずユーザーに通達されます。新しいバージョンを開いたとき、惹起するようなコンテンツが含まれていれば、それはユーザーに届くのです。
iOSアプリの申請には、年間8,400円(2012年4月現在)が必要です。しかし月額にするとたった700円です。iPhoneアプリを作成できれば、まずiOSマーケットにアプリを申請してダウンロードを増やします。ダウンロードしたユーザーは見込客です。電子書籍の配信だけでなく、iOSマーケットでのマーケティングに是非チャレンジして欲しいと願っています。
■Xcode 4でiOSアプリの設定と申請を最短距離でする方法
A5/80ページのテキスト。
第一章 Xcode 4でするiOSアプリの作成と申請のポイント
1-1 Xcode 4でするiPhoneアプリの作成とは
メニューが英語のみとなったXcode
無料でダウンロードできるXcodeはApp Storeからダウンロードする
1-2 DebugとDistributionのプロファイルの違い
実機用ビルドとApp Store用ビルドで異なるプロファイル
1-3 アプリ作成と申請に必要なファイルとテキスト
Xcodeでアプリを作成するときに用意するもの
1-4 アイコン画像ファイルをアプリに設定する
アプリのDevice設定によって異なるアプリアイコン画像の追加
複数のアイコン画像は「Icon files」に設定する
2-1 開発用にキーチェーンでの証明書を読み込む
キーチェーンアクセスの公開鍵で証明書を要求する
2-2 実機用のデバイスにXcodeからインストールできるようにする
デバイスをOrganizerに接続して認識させる
実機の固有識別子を調べてコピーする
固有識別子をiOS Provisioning Portalに登録する
2-3 iOS Team Provisioning Profile:*をダウンロードする
「iOS Team Provisioning Profile:*」を作成する
手動で「iOS Team Provisioning Profile:*」をダウンロードする
2-4 Info.plistのBundle identiferを変更する
URLを逆まさにした文字列でBundle identiferを指定する
2-5 Code SigningのDebugに開発用プロファイルを割り当てる
Xcode 4.xで開発者用プロファイルを指定する
2-6 実機に接続、認識させてアプリをインストールする
[Edit Scheme]で「Debug」を選択してビルドする
2-7 iTunes経由でアプリをインストールする
アプリデータをプロジェクトフォルダに保存する
iTunesにアプリデータをコピーして同期する
2-8 構成ユーティリティから実機にインストールする
iPhone構成ユーティリティからアプリをインストール
VIDEO
*実機インストールの手順動画をYouTubeにアップしました。
3-1 iOS Provisioning PortalのApp IDsで「App ID」を作成する
App IDsパネルでアプリ用のIDを作成する
3-2 配信用のDistributionプロファイルをダウンロードする
配信用プロファイルをProvisioningパネルで作成する
3-3 Distributionに配信用プロファイルを割り当てる
[PROJECT]のinfoタブでConfigurationsを追加する
[Build Settings]で配信用プロファイルを適用する
3-4 配信用アプリデータをビルドしてZIP圧縮する
[Build Configuration]で「Distribution」を選択する
書き出されたDistributionのアプリデータを圧縮する
第四章 iTunes Connectにアプリをアップロードする
4-1 Manage Your ApplicationsでAdd New Appする
[Add New App]で新規アプリを作成する
[Add New App]でアプリの基本情報を登録する
4-2 Rights and Pricingで販売日と価格を設定する
アプリの販売開始日と販売価格を設定する
4-3 [Version Information]でMetadataと画像を指定する
[Version Information]でアプリ内のバージョンと合致させる
「Keywords」で検索用キーワードを指定する
アイコンとスクリーンショットをアップロードする
4-4 「Ready to Upload Binary」で暗号化処理を選択する
「Export Compliance」で「No」か「Yes」を選択する
4-5 Application Loaderでアプリをアップロードする
ZIP圧縮したファイルをApplication Loaderでアップロードする